2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K21499
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
森 類臣 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (60635093)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮) / 音楽 / 芸術 / 社会主義リアリズム / 金日成時代 / 金正日時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、芸術と「宣伝・扇動」の関係性や音楽の社会的機能を扱う理論や概念について整理し考察を深める作業に従事した。具体的には次の通りである。 1.芸術と「宣伝・扇動」を扱う理論について、主に旧ソ連の文学・芸術理論に関する先行研究を収集し、その特徴を整理した。北朝鮮において、具体的にどのようにソ連式芸術表現が受容され、いかに朝鮮的な音楽観と接合していったのかという点はそれほど明確になっているわけではない。この点については、今後分析・実証していく必要があるが、ここではそのための基礎作業を行った。また、音楽の社会的機能については音楽社会学の先行研究を調査し整理した。 2.1960年代に政治社会領域における指導者として地位を固めた金日成は、文学・芸術分野においても指導を行った。金日成および朝鮮労働党が目指した音楽観について、一次資料群を手掛かりに分析を進めた。 3.1980年代中盤になると金正日による音楽分野での指導が目立つようになる。金正日時代には、金日成時代を超える多数の芸術関連書籍・論文、特に金正日の芸術理論を論評・解説するものが増えた。このような一次資料を整理・分析し、金正日時代の音楽観の全体像把握に注力した。 4.上記の研究成果の一部については、次のようにアウトプットした。森類臣(2016)「楽団系譜で見る音楽文化の現在―牡丹峰楽団・青峰楽団を中心に」(原題ハングル)、2016 TUMEN RIVER FORUM、延吉(中国)/森類臣(2016)「A continuity and innovativeness of “music policy” in the Kim Jong-un period」、Korea Global Forum 2016、ソウル(韓国)/森類臣(2016)「芸術公演「追憶の歌」が持つ意味」『北韓研究学会』20号2号、pp.125-152
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「芸術と「宣伝・扇動」の関係性や音楽の社会的機能を扱う理論や概念について整理し考察を深める作業を進める」という2016年度の課題については、75パーセント程度達成できたといえよう。しかし、予定の目標に届かず、不足感も残った。理由は、一次資料の入手に思った以上の時間がかかったことと、関連文献を含めると検討しなければならない文献が予想以上に多く、処理するのに時間がかかったことである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は次のようである。 (1)芸術と「宣伝・扇動」の関係性や音楽の社会的機能を扱う社会学理論・事例研究について、整理を完了させる。 (2)金日成時代、金正日時代の音楽理論・音楽政策のポイントについてその特徴を整理しまとめる。 (3)2016年度の成果のうち、まだ公表していない部分については、所属学会または国際学術会議等で発表し、それを精緻化した上で論文にまとめて学術誌に投稿する。 (4)上記の(1)~(2)は2016年度に完了出来なかった部分の続きであるため、可能な限り2017年度前半に完了させ、2017年度後半からは当初の計画通り、音楽政策を説明するモデル構築に着手する。
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Causes of Carryover |
2016年度は2015年度に引き続き、日本や韓国・中国において一次資料を収集した。予想以上に本研究に必要かつ重要な専攻研究や一次資料が存在したからである。資料の収集と整理・分析に研究費とエフォートを多く投入したため、当初予定していた米国やドイツでの資料調査は延期せざるを得なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は、2016度までに実現しなかった米国やドイツでの資料調査を行いたい。ただし、2017年度の研究費額(直接経費)の関連で、2017年度に米国・ドイツの二カ国を訪問することは難しいと思われる。よって、2017年は米国・ドイツどちらか優先順位の高い方を選択し、さらに研究計画立案時当初考えていたよりも調査対象を多少縮小することにする。
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Research Products
(3 results)