2015 Fiscal Year Research-status Report
旋律と歌詞の計量的分析による日本民謡の地域的特徴の解明
Project/Area Number |
15K21601
|
Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
河瀬 彰宏 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, コーパス開発センター, プロジェクト非常勤研究員 (80739186)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 音楽情報処理 / 日本民謡 / 旋律構造 / 地域研究 / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,日本民謡における地域的特徴(各地域の民謡を構成する要素とそれらの相互的関係)を定量的に明らかにすることが目的である. この目的を実現するために,初年度にあたる平成27年度は,日本民謡の旋律における計量的分析を実施するための分析基盤の構築に努めた.具体的には,『日本民謡大観』(日本放送協会出版)に掲載されている全楽曲の旋律を地域ごとにXML形式として電子データ化する作業を実施した. また,今後の分析の模範的事例として,九州地方(西海道)および中国地方(山陽道・山陰道)の全楽曲の電子データ化とその整備が完了した時点で,試験的に令制国(旧国名)単位での多変量解析に基づく楽曲の分類実験に着手した.これにより,隣接する地域ほど旋律の骨格となる特徴が類似するという結果が得られた.さらに,従来の音楽学研究によって日本音楽の旋律構造を把握する上で重要な概念とされてきた小泉文夫のテトラコルドの使用傾向は,九州地方全域や中国地方全域において,全国規模の標本調査と比較して大きな偏りがあることが数値によって示された.また,現時点では考察の域を出ないものの,テトラコルドの使用傾向による令制国の分類実験の結果は,日本民謡がもつ特徴の伝播・変遷が陸路よりも海路・水路によって進められた可能性を示唆するものであった. これらの成果は,投稿論文,国内学会および国際学会発表,学際的研究会の開催となって結実した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的としていた旋律の電子データ化は概ね完成している.当初予定していなかった問題として,『日本民謡大観』の「目次」に掲載されている楽曲リストと実際のページに掲載されている楽曲との整合性について,不一致のもの,ずれが生じているもの,一曲中に複数の名称をもつものがあり,歌詞の電子データ化に着手する前にそれらの確認と管理する上での対策を検討している.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,旋律の電子データ化に加えて歌詞の電子データ化と,最終年度に向けた地域情報学的分析のための基盤を構築する.具体的な手順としては,(1)テキストの網羅的な電子データ化と,楽曲の採録地域情報,採録年などのコンテンツ情報の管理,(2)地域ごとに旋律的特徴と語彙体系の抽出である.旋律と歌詞の電子データ化が完了次第,多変量解析に基づく構造比較を通して,地域間の相互関係を明らかにしていく.
|
Causes of Carryover |
当初の申請では物品費から研究の基礎データとなる『日本民謡大観』(日本放送協会出版)と電子データ化作業に関わる作業用PCを購入する計画を立てていたが,これらの物品を科研費以外の予算から支出する方針に変更したことによる.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は,各地域の日本民謡の語彙体系を歌詞の分析から探ることが研究の主たる目標となるため,作業効率を円滑にするために,次年度使用額については,新たに作業者を一名加え,作業者三名の体制で歌詞の電子データ化作業に着手する.この作業に関わるソフトウェア購入費用と謝金として支出する計画である.
|
Research Products
(8 results)