2015 Fiscal Year Research-status Report
ジェンダー不公平社会からの脱却:性別役割分業と出生についての日独蘭国際比較研究
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15K21671
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
福田 節也 国立社会保障・人口問題研究所, 企画部, 主任研究官 (90409433)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジェンダー / 性別役割分業 / 出生 / 国際比較 / Well-being |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度においては、データの収集や先行研究のサーベイ、各国の社会調査データの入手といった基礎的な作業に取り組んだ。具体的には、OECD Family Data Base、OECD Korea Policy Centre、Generation and Gender Program (GGP) Consortiumなどのウェブサイトから、日独蘭のの雇用や家族に関する統計データおよび政策に関する情報やこれらに関連する文献を収集した。また、個別課題の分析を行うため、公的統計や既存の全国標本調査の個票データの二次利用申請を行い、必要なデータを入手した。 次に、わが国におけるジェンダーの状況を把握するため、National Transfer Account(NTA)およびNational Time Transfer Account(NTTA)の手法を用いた研究を行った。具体的には、NTAの公表データ、内閣府経済社会総合研究所が刊行した「無償労働の貨幣評価の調査研究 報告書」の公表データ、そして平成13年および平成18年社会生活基本調査の匿名データを用いて、わが国の2004年時点における労働収入、無償労働(家事・育児・介護等)およびこれらの消費に関する年齢別プロファイルが性別によってどのように異なるのかを、金額と時間をベースにして算出し、2009年米国データとの比較を行った。その結果、わが国では無償労働の9割が女性によって担われており、有償・無償の労働時間を合わせると、女性は男性よりも労働時間が長いことが明らかになった。しかし、男女の時間当たり賃金が大きく異なるため、金額ベースでみると男性の方が女性よりも生産額が大きい。米国でも同様の傾向がみられたが、時間と金額の男女差はわが国よりも小さく、わが国よりもジェンダーの平等性が高いことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していたデータの入手が困難となり、予定していた分析が行えなくなる等、一部の予定に遅れを来したものの、主な目的としていたデータや文献の収集は年度内には概ね順調にこなすことができた。しかし、当初予定していなかったNTA/NTTAの研究で、わが国のジェンダー状況の分析を行えたことは収穫であった。今年度は個別研究課題の分析を行う中で、初年度の遅れを取り戻すとともに、国際連携の取り組みを加速させていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度においては、入手したデータを用いて以下の研究課題へと取り組む。 (1)男性の家事時間・育児時間の規定要因に関する研究 わが国では男性の家事・育児参加が、先進国の中でも最低レベルであることが指摘されている。家庭におけるジェンダーの公平性を高めることは、労働市場における男女の機会均等を進めていくうえで重要な視点となる。この研究においては、日独蘭の生活時間調査の個票データを用いて、政策転換の前後の2時点における男性の家事時間・育児時間の違いについて国際比較を行い、政策の転換が男性の家事時間・育児時間と規定要因の双方にどのような影響を与えたのかを明らかにする。オランダでは労働時間による差別が禁止された1996年を、ドイツでは経済支援に偏っていた子育て支援をスウェーデン型の両立支援策へと転換した2006年を、日本では育児休業制度をはじめとする女性就業の両立支援策が段階的に拡充された2000年代初めの10年間を政策転換の時期とする。
(2)男性の家事・育児参加が夫妻のwell-beingに与える影響についての研究 家庭生活におけるジェンダーの公平性を高めていくためには、個人の意識の変化のみならず、男性の家事・育児参加が夫妻双方のwell-beingの向上に資するような社会的条件が必要となる。この研究においては、同一世帯の夫妻から別々に回答を得ているペア調査を用いて、男性の家事・育児参加が夫妻のwell-beingに与える影響について類型化を行い、その規定要因についての国際比較分析を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していなかった海外の学会への参加のための支出が入ったため、予定していたノートPCやモバイル機器等のハードウェアの購入を差し控えた。その結果、差額分が次年度使用額として残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
優秀なアルバイトが確保できたため、次年度前半にアルバイトへの謝金の支払いとして使用する。残額で可能であれば、当初の予定通り、ハードウェアを購入する。
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Research Products
(3 results)