2017 Fiscal Year Research-status Report
ジェンダー不公平社会からの脱却:性別役割分業と出生についての日独蘭国際比較研究
Project/Area Number |
15K21671
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
福田 節也 国立社会保障・人口問題研究所, 企画部, 第2室長 (90409433)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 出生 / ジェンダー / 性別役割分業 / 夫の家事・育児参加 / パネルデータ / 出生児縦断調査 / イベントヒストリー分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、先進諸国では、世帯内におけるジェンダーの平等性が高いほど出生力が高いという傾向が見られつつある。日本では夫婦間の性別役割分業のあり方と出生はどのように関わっているのであろうか。当該年度における研究では、厚生労働省が実施している「21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)」のデータを用いて、夫婦の性別役割分業と第2子出生との関連についての分析を行い、研究所のワーキングペーパー(http://www.ipss.go.jp/publication/e/WP/IPSS_WPE28.pdf)として刊行した。分析の結果、日本では第1子出生時に妻が専業主婦であった世帯の方が、共働きであった世帯よりも第2子出生確率が高いことが明らかになった。しかし、専業主婦世帯、共働き世帯ともに、夫の育児参加と第2子出生との間には正の関連がみられた。また、妻がフルタイム就業である共働き世帯では、妻の家事頻度と第2子出生との間に強い負の関連が見出され、就業女性の「セカンド・シフト」が出生に対して負の影響をもつことが示唆された。一方で、夫による家事参加は出生に対して全く影響を与えていなかった。ただし、妻が自営業者・家族従業者である場合は、夫の家事参加と第2子出生に正の関連があった。この関連は、夫婦共に自営業である場合に特有のものとみられる。自営業における就業環境、例えば、職場と住居が近接しており、就業時間が柔軟であり、仕事内容における男女差が少ないといった条件が整えば、日本でもジェンダー役割の平等性と出生との間に正の関連が見出される可能性が示唆される。政策的な含意としては、女性の就業と出生との間にみられる負の関連をいかに取り除くかが、引き続き重要な政策課題である。また、長時間労働や長時間通勤といった男性の働き方を含めた改革が日本のジェンダーと出生力の両方を改善する鍵であることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成29年度当初予定では、これまで進めてきた日本についての個別研究課題の分析を深化させつつ、国際連携の取り組みにより、国際比較分析を加速させる予定であった。しかし、当該年度には、新規プロジェクトを含む他業務が増大してしまい、国際比較という点では十分な進展を得ることができなかった。また、予定していた「男性の家事時間・育児時間の規定要因に関する研究」についても分析を進めることができなかった。ただし、ドイツ、オランダ、アメリカの研究協力者とは、学会等の機会を通じて継続的に連絡を取り合っている。平成30年1月には、アメリカの研究協力者であるウィスコンシン大学人口学・生態学センターのJames M. Raymo教授を招聘し、日本のジェンダーと結婚の変容に関する共著論文を執筆した。 一方で、日本の状況については、性別役割分業と夫妻のWell-beingあるいは出生との関係について、基礎的な分析結果を得て、成果が出つつある。また、日本の出生に関する研究については、国立成育医療研究センターの加藤承彦氏と同一データを用いて研究を進めていることが明らかとなり、当該テーマについて今後共同で研究を進めることとなった。加藤氏は主に親同居や地域要因が出生に与える影響について分析を行い、福田は妻の就業及び夫妻の家事・育児分担が出生にどのように関わるのかについて分析を行う。共同研究を進めることで知見を深め、研究を大きく前進させていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度においては、以下の研究課題に取り組む。 (1)男性の家事時間・育児時間の規定要因に関する研究 本研究においては、日独蘭の生活時間調査の個票データを用いて、政策転換の前後の2時点における男性の家事時間・育児時間の違いについて国際比較を行い、政策の転換が男性の家事時間・育児時間と規定要因の双方にどのような影響を与えたのかを明らかにする。オランダでは労働時間による差別が禁止された1996年を、ドイツでは経済支援に偏っていた子育て支援をスウェーデン型の両立支援策へと転換した2006年を、日本では育児休業制度をはじめとする女性就業の両立支援策が段階的に拡充された2000年代初めの10年間を政策転換の時期とする。 (2)男性の家事参加・育児参加が第2子・第3子の出生に与える影響についての研究 まずは日本のデータを用いて、女性の就業や男性の家事参加・育児参加が第2子および第3子の出生に与える影響についての分析を行う。2001年に第1子あるいは第2子を出生したグループと2010年に第1子あるいは第2子を出生したグループとの比較を行い、両立支援策の拡充やジェンダー規範の変化によって、性別役割分業と出生との関連がどのように変化しているのかを明らかにする。 また、ドイツ・オランダとの国際比較について進展が遅れているため、平成31年度末まで当該プロジェクトを延長することを検討する。平成30年6月に、国際学会にてドイツ・オランダの研究協力者と会う予定があるため、プロジェクトの延長を前提として、今後の連携についても具体的に話を進めたい。
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Causes of Carryover |
当該プロジェクトを来年度も延長することを視野に入れて、予算執行を控えたため。
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Research Products
(3 results)