2017 Fiscal Year Research-status Report
史料・地質調査データの非線形逆解析による巨大歴史津波の発生機構の解明
Project/Area Number |
15K21682
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
馬場 俊孝 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (90359191)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歴史津波 / 海底地すべり / 津波波源 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災は古津波の痕跡高データの重要性を示したが,その活用方法にはいまだ確立していない.これまでは津波痕跡高データの順解析によって津波波源の大まかな像を推定するのみであった.そこで,本研究では津波痕跡高データによる波源推定手法を研究し,南海トラフで過去に実際に発生した歴史津波に適用することにより,巨大津波の発生機構を詳細に研究する.さらに,それに基づいて,内閣府(2012)で想定されたようなあらゆる可能性を重ね合わせた超巨大な津波ではなく,将来発生する可能性が比較的高い巨大津波災害の予測を高度化する. 昨年度調査した徳島県宍喰の古文書に記載された1512年の歴史津波は,今後の南海トラフの津波被害予測においても重要な事象である.津波被害が局所的であることから,この津波が海底地すべり由来のものである可能性がある.実際,宍喰の沖合およそ24kmには海底地形図で海底地すべりの痕跡が確認できる.今年度は宍喰沖海底地すべり地形の詳細な地形調査および海底地すべり津波の数値シミュレーションを実施した.数値シミュレーションでは,土砂層と海水層を別々に扱う二層流モデルを採用した.このモデルでは海底地すべりが時間発展的に進行するため比較的長波長の津波を励起し,また,海底地すべりの前方(海側)には主に押し波の津波が,後方(陸側)には引き波の津波が伝播した.徳島県南部の宍喰では津波高にしておよそ5mの津波が襲来し,陸上への浸水も発生した.計算された浸水状況は,古文書に記された1512年の歴史津波の被害状況に酷似していた.つまり,本研究の結果から宍喰の南東沖約24kmの海底地すべりは1512年の歴史津波の波源のひとつの候補であると言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は徳島県宍喰の古文書に記載された歴史津波の波源について考察した.海底地すべりがその津波を励起したと仮定して実施した数値シミュレーションは,古文書に記載された被害状況をうまく再現できた.海底地すべりによる津波は未解明な部分が多く,本研究の成果は南海トラフの津波被害予測において重要な知見のひとつである.また,計画時にはなかった二層流モデル導入や海底地形調査により貴重な成果を得た.この件については当初の計画以上に進捗している.一方,歴史津波波源の推定については順解析にとどまり逆解析は実施できておらず,こちらは来年度の課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度取得した宍喰沖の海底地すべりのマルチナロービームデータの詳細な解析を行い,海底地すべりの地形的特徴を明らかにする.また,歴史津波データの非線形逆解析からその波源の推定を試みる.
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Research Products
(6 results)