2016 Fiscal Year Research-status Report
千島アイヌの起源と経済史に関する考古学的研究(国際共同研究強化)
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15KK0031
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高瀬 克範 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (00347254)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 千島列島 / 千島アイヌ / 考古学 / 先史学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年10月下旬から予定しているワシントン大学(シアトル)における共同研究の事前打ち合わせを,資料が保管されているワシントン大学人類学科およびワシントン大学内のバーク博物館において実施した(2017年1月9日~13日)。共同研究の研究対象となる資料は,かつてワシントン大学が実施したKuril Biocomplexity Project(KBP)において回収された千島列島の考古学的遺跡から出土した石器・動物骨である。石器はワシントン大学人類学科に保管されており,資料の総量,保管状況,資料が入っているビニール袋に付されている情報のチェックなどを行った。動物骨はバーク博物館に保管されており,やはり総量,保管状況,ビニール袋に記載されている情報の種類を確認した。これら資料の簡便な台帳のデータも譲り受けることができたため,現時点で知ることができる動物骨の組成を算出し基礎データとした。現地においては,Ben Fitzhugh氏(ワシントン大学人類学科准教授),Julie Stein氏(同大人類学科教授,バーク博物館館長),Laura Phillips氏(バーク博物館考古学学芸員),Siri Linz氏(バーク博物館考古学学芸員)にお世話になった。 このほか,アメリカ滞在中に利用する研究機器(顕微鏡,3Dスキャナ一式)を購入した。これまで利用経験がない3Dスキャナについては,渡航後にスムーズに利用できるように繰り返し練習することで利用方法を修得した。 もうひとつの渡航先であるロシア科学アカデミー極東支部東北学際研究所とも緊密に連絡をとり,2017年10月の滞在と研究について準備をすすめた。基課題の事業で本研究所を2017年3月に訪問する機会があったため,そこでも受入研究者のA. I. Lebedintsev氏(同研究所)と2017年10月の滞在について具体的な打合せを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
渡航先のひとつであるワシントン大学で打合せを実施し,資料の基本的情報のみならず,研究環境の詳細についても明確な見通しをえることができた。もうひとつの渡航先であるロシア科学アカデミー東北学際研究所とのあいだでも,緊密に連絡を取り合い準備をすすめている。また,渡航先で利用する予定の機材を購入し,その利用法を修得することができたため,渡航後に円滑に研究を開始できると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
渡航期間中,千島列島出土動物骨のより詳細なデータベース(3Dイメージをふくむ)を作成し,従来よりも解像度の高い動物利用の変遷過程を解明する。とくに,現時点では一括して集計されている「アイヌ文化期」のなかを,理化学的年代測定を併用しながら古段階(15-17世紀)と新段階(18世紀以後)に区分し,その間の経済変化を明らかにできるよう留意する。その際,とくに動物骨のなかでラッコが占める割合に注目し,毛皮交易への依存度を評価する。石器については,可能な限り多くの資料を顕微鏡で観察し,その利用対象や制作時に用いられているハンマーの材質を解明することで交易への依存度を間接的に推定するためのデータを収集する。
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