2016 Fiscal Year Research-status Report
構造設計が自在な有機分子還元剤による還元反応の革新と機能開拓(国際共同研究強化)
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15KK0186
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
劔 隼人 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60432514)
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Project Period (FY) |
2016 – 2019
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Keywords | 表面有機金属化学 / 還元反応 / メタセシス反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体触媒に適用可能な還元剤として開発を進めてきた有機ケイ素化合物と各種シリカ担持金属錯体の反応による低酸化数化学種の発生法に関して検討を開始した。これまでの検討結果として、均一系溶液中では還元反応後に低酸化数化学種が会合し、触媒性能の発現が困難である場合において、シリカ表面に錯体を担持することで会合を抑制し、基質との反応点を有する化学種を生成可能であり、さらにはオレフィンメタセシス触媒に対して高い反応性を示すことを明らかにしてきた。そこで、各種前周期遷移金属錯体のシリカ表面への担持実験を行い、700℃程度の高温条件下で真空乾燥したシリカを用いることで金属錯体が会合することなく表面上に分散した金属錯体担持シリカが得られた。それぞれの錯体担持サンプルは各種固体NMRを用いて解析し、シリカ表面での結合様式を明らかにした。続いて、還元剤として作用する様々な構造の有機ケイ素化合物を用いてシリカ担持金属錯体の還元反応を行ったところ、有機ケイ素化合物の構造に応じて還元反応の進行の程度を制御可能であることを明らかとした。特に6族遷移金属錯体を担持したシリカサンプルにおいて、還元反応後に様々なオレフィン基質を加え、その触媒作用について検討し、オレフィンメタセシス反応や重合反応、オリゴマー化反応など、金属の種類に応じて触媒反応特性が大きく異なることを見出した。また、還元剤との反応後の化学種は様々な酸化数を含むことから、各種X線測定による酸化数の特定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固体触媒の還元反応には、従来、水素ガス等を用いて非常に高温下で処理する技術が用いられてきた。この手法は還元剤が容易に入手できることから幅広く用いられてきた一方、温和な条件下での還元反応は困難であり、その結果、固体触媒で用いることのできる基質が限定されるという問題点を有していた。また、その他にも様々な還元剤が報告されている一方、多くの場合に還元剤由来の塩が形成するため、固体表面上の反応点を阻害し、触媒劣化につながっている。それらの諸問題の解決法として還元反応後に金属塩等を副生しない還元剤を開発しており、これまでに様々な均一系錯体に対して適用してきた。さらに最近では、表面有機金属化学の手法により固体担体上に分散担持した金属錯体の還元反応に適用可能であることが分かりつつある。実際に、固体表面に担持したタングステン錯体を有機ケイ素化合物により還元することで高い触媒活性を有する化学種の成功に成功しており、同様の手法を広範囲の固体触媒に適用すべく実験を開始しており、研究は順調に進んでいる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
シリカに担持した金属錯体を触媒とする様々な分子変換反応はこれまでに数多く発展してきており、触媒化学において固体触媒は非常に重要なものである。化学合成における大量生産を可能とする触媒として産業界でも多用されていることから、その高性能化は長年にわたって進められている重要な研究課題である。近年の高性能化手法として、シングルサイト状態で固体表面上に金属錯体を導入し、金属の特性を最大限に活かした触媒開発が行われており、その中で、均一系錯体と同様に活性種を温和な条件下、生成する方法論の開発が進められている。活性種形成法の一つとしてシリカ表面上での金属錯体の還元反応を挙げることができ、各種金属錯体に対して有機ケイ素化合物を作用させることで触媒活性を発現することが分かってきた。そこで、さらに広範囲の金属錯体をシリカ表面上にシングルサイト状態で導入するとともに、様々な構造・還元力を有する有機ケイ素化合物を用いることで、シリカ表面上に狙いとする化学種を発生させ、多様な触媒反応に展開する。
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