2016 Fiscal Year Research-status Report
マメ科植物-根粒菌共生における新しい共生経路の解明(国際共同研究強化)
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15KK0276
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
岡崎 伸 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40379285)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | マメ科植物 / 根粒菌 / 共生 / 3型分泌系 / Aeschynomene / クサネム / エフェクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、根粒菌Nod factor(NF)に依存しないマメ科植物の根粒形成機構について、フランス農業開発研究国際協力センターGiraud教授のグループと共同研究を行い、双方の結果を融合してNF非依存的根粒形成機構解明を目指している。今年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 1. クサネム根粒菌の共生における3型分泌系の役割・・・クサネム根粒菌の共生に3型分泌系が関与しているかを解明するため、クサネム根粒菌STM6978株の3型分泌系遺伝子破壊株を作成し、ダイズ、ミヤコグサ、アルファルファなどのマメ科植物に接種した。その結果、ダイズにおいては野生株に比べて3型分泌系破壊株の根粒形成数が減少した。ミヤコグサ、アルファルファでは野生株、3型分泌系破壊株どちらについても根粒形成はみられなかった。したがって、クサネム根粒菌の3型分泌系はダイズの根粒形成シグナルを活性化するが、ミヤコグサ、アルファルファの根粒形成シグナルは活性化できないか、もしくは他の因子が必要であることが示唆された。 2. クサネムの根粒形成を促進する根粒菌エフェクターの検索・・・情報学的解析によりクサネム根粒菌STM6978株ゲノム中でエフェクター遺伝子を検索し、約35遺伝子候補を検出した。これらの遺伝子の破壊株をフランス側と分担して作成し、クサネムへ接種して共生形質を評価した。その結果、3型分泌タンパク質をコードすると予想される遺伝子nop380004の破壊株では、野生株よりも顕著に根粒形成が低下していることが判明した。この結果から、nop380004がクサネムの根粒形成シグナルを活性化する根粒菌エフェクターであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NF非依存的根粒形成を促進するエフェクターの同定は本研究の最重要課題の1つであり、エフェクターの有力候補としてnop380004の同定に成功したことは、大きな進展といえる。 今後nop380004の解析を進めることで、NF非依存的な根粒形成シグナルがどのように活性化されるのか、分子レベルで明らかにできると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 根粒菌エフェクターを発現するクサネム形質転換毛状根の作出と根粒形成能の評価・・・クサネム細胞内における根粒菌エフェクターの局在が、クサネムとの共生成立を決定するスイッチとなるかを検証するために、エフェクターを発現するクサネム形質転換毛状根を作出し、その根粒形成を検討する。 2. 根粒菌エフェクターと相互作用するクサネムタンパク質の検索・・・根粒菌エフェクターが、クサネム側のどのようなタンパク質と結合するかをPull down assayにより検索する。 3. 根粒菌3型分泌系により活性化されるクサネム遺伝子の網羅的解析・・・根粒菌3型分泌系によりクサネムに引き起こされる遺伝子発現を網羅的に解析するために、トランスクリプトーム解析を行う。
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