2017 Fiscal Year Research-status Report
マメ科植物-根粒菌共生における新しい共生経路の解明(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0276
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
岡崎 伸 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40379285)
|
Project Period (FY) |
2016 – 2018
|
Keywords | 根粒 / マメ科植物 / 共生 / III型分泌系 / エフェクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Giraud博士のグループと共同して根粒菌Nod factorに依存しないマメ科植物の根粒形成機構の解明を目指している。今年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 1. ダイズへの根粒形成における根粒菌エフェクターの解析は主に日本側で行なった。ダイズ根粒菌Bradyrhizobium elkanii USDA61株のエフェクター候補遺伝子破壊株を作成し、ダイズに接種して根粒形成への影響を評価した。その結果、エフェクターNopL、NopM、ORF5208がダイズへの根粒形成を相乗的に促進し、特にORF5208はダイズにおいて劇的に共生を促進していることが明らかとなった。一方、クサネムにおいてはORF5208の影響はそれほど大きくはなく、エフェクターの効果は宿主植物に依存することが判明した。 2. フランス側と共同でクサネム共生菌STM6978株のエフェクターNop380004が、クサネムAeschynomene indicaとの共生に必須であることを明らかにした。 3. 上記USDA61株のエフェクターORF5208とSTM6978株のエフェクターNop380004は互いの相同性は低いものの、どちらもシステインプロテアーゼと相同性を有する。この2つのエフェクターが、宿主植物の根粒形成において同様の機能を保持するか遺伝的相補試験により調査した。STM6978株は根粒菌Nod factor receptor変異ダイズへ根粒着生できなかったが、ORF5208を相補したSTM6978::ORF5208株は根粒を着生した。一方、クサネムとの共生能力については、STM6978株と同様であった。この結果はORF5208がダイズで機能するがクサネムでは機能しないことを示しており、エフェクターが宿主植物との共進化の中で特異的機能を獲得してきたことを示唆するものであった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイズ根粒菌USDA61株のエフェクターORF5208、クサネム根粒菌STM6978株のエフェクターNop380004、それぞれの機能解析が進み、2つのエフェクターが宿主植物との共進化の中で特異的機能を獲得してきたことを示唆する結果を得たことは大きな進展と言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
それぞれのエフェクターが宿主の根粒形成シグナルを如何に活性化するかを解明するため、以下の実験を行う。 1. 根粒菌エフェクターを発現するダイズ/クサネムの作出と根粒形成の評価・・・根粒菌エフェクターをマメ科植物細胞内で発現させた場合、根粒形成シグナルを活性化するかどうかをAgrobacterium rhizogenesを用いた毛状根形質転換法により解析する。昨年度までに遺伝子導入の準備を完了しており、今年度は毛状根誘導実験に入る予定である。 2. 根粒菌エフェクターにより活性化される宿主側遺伝子の解析・・・根粒菌エフェクターの有無がダイズ/クサネムにどのような遺伝子発現応答を引き起こすかをRNA-Seq、qRT-PCRなどにより解析する。
|