2015 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋グルココルチコイドレセプターを介した転写制御機構に関する研究(国際共同研究強化)
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15KK0332
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 宣明 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (30396890)
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Project Period (FY) |
2015 – 2017
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Keywords | PGC1 |
Outline of Annual Research Achievements |
グルココルチコイド(GC)-グルココルチコイドレセプター(GR)軸をカギとした遺伝子転写制御を介した骨格筋タンパク質代謝調節(Shimizu NらCell Metabolism 2011)は,骨格筋(Muscle)-肝臓(Liver)-脂肪組織(Adipose)連携(MLA軸)によって,全身の貯蔵エネルギー物質バランス,エネルギーフロー制御の重要な一翼を担っていることを明らかにした(Shimizu NらNature Communications 2015).本研究では,骨格筋代謝制御におけるGCの作用機構と生理的な意義を,GRを介した遺伝子発現制御機構の解析,とくにresistance exerciseによる筋肥大のカギ因子PGC1alpha4およびendurance exerciseによる好気的代謝亢進のカギ因子PGC1alpha1がこの機構において果たす役割の解析を基軸として究明する.また,メカニカルストレスすなわち運動による全身エネルギー代謝制御の変容機構において,MLA軸が果たす役割を示し,Mechano-Metaboカップリングの分子的基盤を明らかにすることを目的としている.平成27年度の研究期間およそ1ヶ月間で,マウス骨格筋GR機能の喪失が、骨格筋におけるPGC1alpha1 mRNA発現亢進とPGC1alpha4 mRNA発現亢進をもたらすことを明らかに示した.この結果は,PGCシグナルとGRシグナルが互いに抑制性のクロストークをなすことで,骨格筋タンパク質の代謝バランスを制御している可能性を示唆する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
やむを得ない事情(所属研究室で発生した小規模火災への対応と事後処理)のため,交付申請書に記載した平成28年3月(平成27年度)の渡航予定を平成28年5月(平成28年度)に延期したが,国内で行う実験計画を前倒して開始したことで研究計画全体の進捗はおおむね順調と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
全身のエネルギーフロー制御が、骨格筋運動によって調節されている機構を以下の研究によって明らかにする。 1. 骨格筋PGC1αがGRによる転写・翻訳を介したタンパク質代謝に及ぼす影響の解析:骨格筋特異的PGC1α1トランスジェニック(mα1)マウス、骨格筋特異的PGC1α4トランスジェニック(mα4)、また有酸素運動トレーニングをした野生型(enWt)マウス、筋力負荷トレーニングした野生型(reWt)マウスにグルココルチコイドを投与する。これらマウスの骨格筋mRNA発現プロファイル,筋線維径を解析する。PGC1αおよびグルココルチコイドレセプター(GR)が結合するゲノム領域を同定する。骨格筋特異的GRノックアウト(GRmKO)マウスにトレーニングを行い、PGC1α~GR相互作用標的遺伝子の発現制御におけるGRとPGC1αの役割を明確にする。 2. 骨格筋GRがPGC1αアイソフォームの選択的発現制御に及ぼす影響の解析:PGC1α1とPGC1α4のプロモーター領域におけるGRなど転写因子のリクルートメント、RNAポリメラーゼIIのリクルートメントを、P1に記載したmα1、mα4、enWt、reWt各マウスの骨格筋で解析する。 3. 運動による筋タンパク質代謝変化が肝臓、脂肪組織の代謝に及ぼす影響の解析: mα1、mα4各マウスを背景に、GR floxマウス、GRmKOマウスを作製する。これらマウスを、普通食または高アラニン含有食で飼養し、絶食によって骨格筋タンパク質異化を誘導する。このとき、骨格筋、肝臓、白色脂肪組織におけるmRNA発現プロファイル、血漿中アミノ酸成分、血漿FGF21濃度、各組織中の栄養物質(グリコーゲン、トリグリセリド等)含有量の解析を行う。PGC1α4によるGR標的遺伝子発現の鈍化が、全身エネルギーフローの変容を、血中アラニン量依存的に引き起こす可能性を検証する。
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Research Products
(4 results)