2017 Fiscal Year Research-status Report
上皮間葉相互転換システムを利用した細胞極性の形成と消失の可逆的制御機構の解析(国際共同研究強化)
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15KK0347
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
福田 信治 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 講師 (70398238)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | RSK / 乳がん / 乳腺オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
欧米の乳がん罹患率、死亡率が低下している一方で、日本の乳がん患者数は現在も増加し続けている。最大の問題は転移であるため、転移能に直結する乳腺細胞の上皮間葉特性の研究は重要な課題である。Vanderbilt大学の所属研究室は乳腺細胞の上皮間葉特性の制御に関わるリン酸化酵素RSK2の研究を行っており、RSK阻害剤であるSL0101、及びヒト乳腺細胞のオルガノイド培養技術を開発した。本研究では、SL0101に由来する化合物の効果を調べると共に、RSK2を可視化できる細胞の樹立、及びヒト乳腺オルガノイド培養系の習得に取り組んだ。昨年度は昆虫細胞発現系を用いて、恒常活性化型RSK2のタンパク質を精製したが、今年は阻害剤が野生型RSK2にも効果をもつことを確認するため、野生型RSK2、RSK1、RSK4の精製を行った。合わせて、阻害剤が効果をもたらすドメインを決定するため、N末、C末、RSK1RSK2キメラタンパク質も作製した。これらを用いた研究から、SL0101派生化合物はRSK2, RSK1の両方に対して、ゆっくりと結合すること、その責任領域はN末キナーゼドメインであることを明らかにした。また解離が遅い化合物を同定することができた。並行して、遺伝子組み換え技術であるCRISPR-Cas9システムを習得した。RSK2の末にGFP遺伝子を組み込んだ乳がん細胞株MCF7を樹立した。現在、この細胞を用いてRSK2と相互作用するタンパク質の同定を試みており、RSK2が関与する上皮間葉細胞特性を制御する分子ネットワークの解析へと進めている。2018年2月に帰国し、愛媛大学乳腺センターとの共同研究を本格的に開始、現在は日本人由来の乳腺オルガノイド培養系の構築を進めつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上皮間葉特性を制御するRSK2ネットワークを明らかにするため、質量分析によるRSK2結合因子の探索を行った。しかし、キナーゼと結合因子の結合が一過的、あるいは弱いため、未だ有力な結合因子の同定に至っていない。現在、単純な免疫沈降からRSK2と近距離にあるタンパク質をラベルできる手法に切り替え、結合因子やリン酸化基質などの同定を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
RSK2阻害剤については論文発表に向けてデータ整理を進めている。RSK結合因子の同定はBirA, APEX2という比較的新しい技術を取り入れ、条件検討を行っている。 愛媛大学乳腺外科とは本格的な共同研究を始め、日本での乳腺オルガノイドの培養系の構築を進めつつある。
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