2018 Fiscal Year Research-status Report
医薬品候補化合物の副作用発症確率を予測する数理モデルの創成
Project/Area Number |
15KT0017
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高木 達也 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (80144517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日比 孝之 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (80181113) [Withdrawn]
岡本 晃典 北陸大学, 薬学部, 講師 (70437309) [Withdrawn]
川下 理日人 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (00423111) [Withdrawn]
田 雨時 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (60761252)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2020-03-31
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Keywords | 重篤希少有害事象 / 機械学習 / AI / 化学記述子 / ATCコード |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性症候群、横紋筋融解症、スティーブンス=ジョンソン症候群、血小板減少症に関して、個別に、各有害事象を起こし得る危険性を有する、化学、薬学上の必要条件を導き出し、70%以上の予測精度で推測可能であることを示すことができた。(1)血小板減少症に関しては、KNN法、ロジスティック回帰法、ランダムフォレスト法、ナイーブベイズ法を同時に用いる、組み合わせ機械学習法(Stacking法)を用い、テストデータで77%、トレイニングデータでは87%の全体正答率(ACC)を得ることができた。重要な記述子としては、水素結合に関する因子、化学反応性に関する因子、静電相互作用に関する因子が残り、蛋白質との相互作用の強さが関連するのではないかと推察される。(2)スティーブンス=ジョンソン症候群に関しては、カーネルPCAで特徴量を成分化して記述子として用いた。また、機械学習法としてはロジスティック回帰、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト法に、勾配ブ―スティング法を加えて用いた。テストセットでの真陽性率は80%に達し、所期の目的には到達している(偽陰性率には本来、着目していなかった)ものの、まだ、全体の陽性率は高くなく、今少し検討を加える必要があると思われる。 この他、悪性症候群に関しても、勾配ブースティング決定木法を試みたが、昨年までに報告した結果を上回ることはできなかった。
なお、血小板減少症の結果に関しては、第46回構造活性相関シンポジウムにて、悪性症候群の結果に関しては、19th International Conference on Medicinal Chemistry and Multi Targeted Drug Delivery (San Francisco, Nov.05-06, USA)にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的とした重篤希少有害事象の大半は、個別に発症可能性を有する化学構造の必要条件を洗い出すことに成功した。 例えば、悪性症候群に関しては82%(AUC)という精度で推測することが可能であった。また、重要な記述子として、RNCG の係数が大きく、この記述子の値は、原子数に比して3次元的に嵩高い分子で大きくなるところから、立体的に嵩高い分子で悪性症候群発症の可能性が高くなることが示唆されるなど、単にブラックボックス的に予測性を上げただけではなく、その化学的因果関係にも迫った。幾つかの予測困難な希少重篤有害事象は残ったが、ほぼ、当初予定していた有害事象の予測は目的の精度を達成できた。 また、スティーブンス・ジョンソン症候群に関しても、Kernel主成分分析と勾配ブースティングフレームワーク の併用で72%の正答率(AUC)を得た。加えて血小板減少症でも、数個の機械学習法をStackingで纏め、77%の正答率(ACC)を得た。 更に、全体を通して重要な記述子として、「Lipinski の Rule of five に違反する数」が選択されている。Druglikeでない医薬品に重篤有害事象の発症確率が増大すること、即ち、Druglikeness がその本来の意味以外に重要な意味(有害事象に対して)を持っている可能性がある事を示唆している。 これらの結果より、おおむね順調に進展したと判断した。残るはこれらの統一的取り扱いと論文化、研究発表であり、可能であれば、パッケージ化する予定であるが、難点は見当たらないので、1年以内に解決すると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在残っているのは、(1)幾つかの重篤有害事象の正答率の今少しの向上、(2)全体を通した重要記述子の選出と、その統一的な理解、(3)国際学会での発表、(4)論文としての投稿 である。 (1)に関しては、血小板減少症の予測で良好な結果を得たStackingを、他の重篤希少有害事象予測にも応用でいないか、試してみる予定である。また、(2)に関しては、全体を通した重要記述子を概観することにより、これらの重篤希少有害事象を「起こし易い」分子構造に統一的因果関係がないか、調査してみたい。現在のところ、4級炭素、局所的疎水性記述子、分子の立体的嵩高さに関する記述子などが、全体を通した重要記述子として浮上しており、或は、共通のメカニズム(もちろん部分的な)がある可能性を払拭できない。 最後に、(3)に関しては、これらの結果を国際学会(現在のところ、22nd International Conference on Medicinal Chemistry, Drug Discovery & Drug Delivery, December 02-03, 2019 Singaporeの予定)で発表するとともに、論文投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
旅費として、2度の国際学会を予定していたが、その内の一度は、紹興市で行われた、「第11回日中合同医薬品の分子設計に関する国際学会」での情報収集にとどめ(田雨時)、旅費が大幅に削減できたこと、学生が発表の予定であったが、第46回構造活性相関シンポジウム(大阪)で、血小板減少症に関する発表を行ったこと、また、参加費が予定より安価であったことが、2018年度予算が余剰した最大の原因である。今年度は活発に学生の参加も含めて国際学会で発表するとともに、論文投稿を行う予定で、論文等への視覚的表示のために、グラフィカルな機械学習ソフトウェアを購入する予定である。
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