2015 Fiscal Year Research-status Report
低窒素型農畜産業を軸とした食料循環に関する学際研究
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15KT0032
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉野 章 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (80240331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 慎一 京都大学, 農学研究科, 助教 (20434839)
吉積 巳貴 京都大学, 森里海連環学教育ユニット, 特定准教授 (30423023)
清水 夏樹 京都大学, 森里海連環学教育ユニット, 特定准教授 (40442793)
間藤 徹 京都大学, 農学研究科, 教授 (50157393)
東樹 宏和 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (60585024)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 無肥料栽培 / 山地酪農 / 窒素循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
低窒素型食循環の可能性として、耕種における無肥料栽培と畜産における山地酪農の実践事例を分析し、南あわじ市における実証を検討している。それぞれ無肥料栽培班、山地酪農班、並びに南あわじ班の3班に分かれ、相互に情報交換しながら研究をすすめてきた。 平成27年度は、研究の初年度として、無肥料栽培班は、調査対象地(千葉県富里市)を訪問し、圃場の視察と先方との意見交換を行い、研究の進め方と目標について相互確認を行った。複数の無施肥圃場と近隣の対照圃場の土壌を採取し予備的な分析も行い、土壌の窒素含有率と炭素含有率を計測した。その結果、対照区と比較して、無肥料栽培区の土壌は、炭素含有率だけでなく窒素含有率の低さも確認できた。 山地酪農班は、岩手県岩泉町を訪問し、実践牧場の視察と経営についての聞き取り調査を実施した。その結果、山地酪農の窒素循環は牧場内で完結しており、水や表土の保全、国土経営なども含めて、極めて環境負荷の小さい酪農であることが分かった。ただし、その経営はたいへん厳しく、その原因が、山地酪農の技術的な成立条件ではなく、主に現代の加工型酪農から供給される牛乳との価格競争にあり、山地酪農を支える加工・流通・販売のあり方とマーケティング戦略の見直し・開発の必要性を確認した。 南あわじ班は、南あわじ市の農畜産業の現状を調査した。南あわじ市は、京阪神に対する農産物供給基地として機能したきたが、近年の高齢化や市場環境の厳しさにより、その将来的方向が模索されている。慣行的な農業の維持・強化が図られる一方で、新規就農者や若い担い手を中心に、環境と調和した農業の実践も萌芽的に見られ、将来的課題が関係者間で共有されながらも、その方向が定まっていない現状が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
無肥料栽培班においては、本研究の申請から決定の間に、研究分担者の在外研究等が決まり、研究を始めるうえで必須である調査対象者との顔合わせが平成27年度の年度末となってしまった。ただし、調査班の間では、Skypeを用いた研究会などを実施し、議論と情報共有を実施することができた。また、最初の現地訪問で、調査対象との濃密な議論をおこなうことができ、仮説検討と調査計画の具体化など、短い期間に多くの収穫を得ることができた。 南あわじ市の物質循環調査においては、地元の受け入れ組織との綿密な打ち合わせをすることができた。環境調和型の農業に関心を持ち、実際に取り組んでいる農業者のネットワークづくりにも参加することができ、調査対象として、実証事例としての協力を要請することができた。ただし、物質循環調査など、研究分担者の健康上の理由により、初動にとどまった研究課題もあった。 山地酪農班は、平成27年度中に3事例を訪問することができ、山地酪農の現状と課題について実践者から詳しく聞き、意見をもらうことができた。また、今後の調査研究に対する協力の内容と進め方についても相互確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
無肥料栽培班は、平成27年度の視察と聞き取り調査、並びに予備的分析の結果を踏まえて、平成28年度は、圃場における物質収支の測定、土壌の養分含有と物理性の分析、並びに土壌中または作物に含まれる微生物の生態を分析する。 山地酪農班は、平成27年度に調査した事例以外の事例調査も実施ながら、窒素循環の定量的な把握も試みる。また、山地酪農による牛乳・乳製品のマーケティング戦略の検討も行う。 南あわじ班は、地域農業再編の方向性を検討するとともに、それを受け入れる地域システムの分析と、それによる物質循環からの評価について検討する。
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Causes of Carryover |
本研究の申請から決定の間に、研究分担者の在外研究等が決まってしまったり、健康上の理由など、想定外のことで研究の開始がやや遅れてしまい、当初予定よりも研究の進捗が遅れているため、実支出額についても予算よりもやや少ないものとなった。また、山地酪農についての調査で、当初計画よりも市場調調査に重点をおくべきことが確認されたため、そのための予算配分を増やすために、当該年度予算を翌年度以降に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
無肥料栽培班においては、無肥料栽培圃場における物質収支の測定、土壌の養分含有と物理性の分析、並びに土壌微生物解析を実施するための諸経費、並びに他事例の視察と聞き取り調査に経費の大半を使用する。山地酪農班は、山地酪農の実践事例調査および山地酪農の牛乳・乳製品のマーケティング戦略検討のための市場調査に支出する。南あわじ班は、主に現地での実態調査と意見交換のための調査旅費および調査補助の人件費に支出する予定である。
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