2017 Fiscal Year Research-status Report
低窒素型農畜産業を軸とした食料循環に関する学際研究
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15KT0032
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉野 章 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (80240331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 慎一 京都大学, 農学研究科, 助教 (20434839)
吉積 巳貴 京都大学, 森里海連環学教育ユニット, 特定准教授 (30423023)
清水 夏樹 京都大学, 森里海連環学教育ユニット, 特定准教授 (40442793)
間藤 徹 京都大学, 農学研究科, 教授 (50157393)
東樹 宏和 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (60585024)
真常 仁志 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (70359826)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 無肥料栽培 / 自然栽培 / 山地酪農 / 微生物叢 / 次世代シーケンシング / 地力窒素 / 消費者需要 / バイオマス利活用 |
Outline of Annual Research Achievements |
作物が必要とする栄養成分の中で、作物の生育を律速することが最も頻繁に認められるのがアンモニウム塩、硝酸塩などの窒素化合物で、施肥を行わない自然農法において、作物が必要とする窒素成分は、土壌有機物の分解、土壌の窒素固定微生物によって固定される大気の窒素ガス、降水(雪、雨)に供給される硝酸塩によってまかなわれると推定される。土壌有機物に含まれ、無機窒素を供給する母体であると推定される土壌タンパク質の性質を調べるため、土壌に含まれるタンパク質を、水酸化ナトリウム、クエン酸緩衝液、希硫酸などで抽出することを試み、関西の花崗岩母材の土壌では、0.1モル水酸化ナトリウム溶液で土壌窒素の20%が、火山灰由来の土壌では5%程度が溶出されることを示した。また、無肥料・無農薬栽培圃場の土壌分析を行った結果、土壌中の養分存在量を減少させていたが、微生物の働きに支えられながらその少ない養分量に応じた収量を得ていることがわかった。慣行栽培圃場と無施肥圃場の土壌について、細菌16S rRNA配列および真菌ITS配列のイルミナ・シーケンシング解析を実施した。農地周辺の里山土壌に生息する微生物の多様性解析も行った。 山地酪農については、低窒素循環が生産システムとしては確立されているが、牛乳の安定供給と乳価維持を目的とする制度的桎梏によりその成立が阻まれていることを明らかにした。また、アンケート調査に基づいて牛乳に関する消費者分析を行った。その結果、消費財としての牛乳は、コモディティ化が深刻で山地酪農実消費者層は極めて限られているものの、潜在的需要者層は確実に存在しており、そうした消費者層の特徴を明らかにした。 南あわじ市の畜産業および家畜排せつ物等の農業利用について,実態と2012~2017年の変化を把握した。また,奈良県の茶産地を対象に地域資源の循環利用の実態を農業経営・土壌環境の両側面から把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度末において、土壌学の分野から真常仁志准教授の参加が可能となり、研究のさらなる充実を図れることとなった。このため、土壌学からの視点と研究成果を含めた研究計画の練り直しを行い、研究成果のとりまとめを1年間延期することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
無肥料栽培圃場については、土壌分析を継続する。また、慣行圃場との比較において微生物群集構造の違いについて統計解析を進める。 山地酪農については、山地酪農経営の実態分析を継続する。消費者市場分析の成果を投稿論文としてとりまとめる。 地域事例については、これまでの地域システムおよび資源循環の研究成果と、無肥料栽培と山地酪農の分析から得られた知見をもとに、地域住民との議論を進める。 これまでの各分野での研究成果を統合し、南あわじ市での実践に向けた課題を検討する。
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Causes of Carryover |
計画当初、協力が得られなかった土壌学分野から真常仁志准教授が参加いただけることになり、平成27年度末から研究組織を変更した。ただし、真常准教授の研究においては1年以上の研究期間を要するため、期間を延長し、これに歩調を合わせる形で、他の分担者の研究の進行を遅らせた。平成30年度は、真常准教授の研究成果を待って、研究のとりまとめに入る予定である。
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Research Products
(4 results)