2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15KT0066
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
桑野 良一 九州大学, 理学研究院, 教授 (20273477)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2020-03-31
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Keywords | 触媒的不斉合成 / 水素化 / 芳香族複素環 / キノリン / 金属担持触媒 / 金属錯体触媒 / 不斉触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウムなどの様々な金属担持触媒を用いた2-フェニルキノリンの水素化について、1,1'-ビ-2-ナフトールのホスホン酸エステルをブレンステッド酸有機触媒の添加効果を確認した。しかし、ホスホン酸の添加は触媒活性ならびに水素化生成物の収率の低下を招き、触媒毒として働くことがわかった。 キノリンのピリジン環の水素化に比較的高い触媒活性を示すPt/C触媒を用いて、カルボン酸、スルホン酸などのブレンステッド酸のみならず、ルイス酸性を示す金属塩といった各種酸性物質の添加効果を検討した。その結果、Yb(OTf)3をはじめとする希土類トリフラートならびにNi(OTf)2が加速効果を示すことがわかった。しかし、これらのイッテイルビウム錯体ならびにニッケル錯体を1,1'-ビ-2-ナフトールなどの光学活性ルイス塩基性有機分子で修飾した不斉触媒の共存下で、Pt/C触媒による2-フェニルキノリンの不斉水素化を試みたが、立体選択性の発現はみられなかった。 そこで、その他の金属担持触媒によるキノリンの水素化について各種酸性化合物の添加効果を確認した。Rh/Cを触媒としてキノリンを水素化した場合、ベンゼン環ならびにキノリンの炭素環が優先的に水素化されたが、希土類塩を添加することによってその化学選択性が逆転し、ピリジン環が選択的に水素化されることがわかった。 今後、この知見を基盤にして、芳香族複素環の触媒的不斉水素化に有効な金属担持触媒-光学活性ルイス酸触媒複合不斉触媒系の構築を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究により、当初の計画で想定していた光学活性ブレンステッド酸による金属担持触媒によるキノリンの水素化の立体化学制御は困難であることがわかった。特に、従来からしばしば利用されていた白金触媒を用いた系では、ある程度の酸性化合物の添加効果はみられたものの、明確ではなかった。 しかし、その一方で、Rh/Cを触媒とした場合、化学選択性についてルイス酸性金属塩の添加効果が明確に現れた。これは計画立案時に予期できなかった新しい発見であり、これまでにも知られていない現象であり、学問的にも非常に興味深い。また、ルイス酸性金属塩を不斉配位子によって修飾すれば、Rh/C触媒による水素化に有効な金属担持触媒-光学活性触媒複合不斉触媒系を構築することは十分に可能であり、これを基盤とした新しい研究が展開できるものと大いに期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に得られたRh/C触媒によるキノリンの水素化におけるルイス酸性金属塩の添加効果にかんする知見を基盤にして、キノリンの不斉水素化に有効な金属担持触媒-光学活性ルイス酸触媒複合不斉触媒系の構築を目指す。 金属担持触媒としてRh/CやRh/アルミナなどのロジウム触媒を用いて、各種光学活性ルイス酸性金属錯体の不斉誘起能を調査する。そこで見出される光学活性ルイス酸触媒を用いて、反応条件を最適化し、金属担持触媒-光学活性ルイス酸触媒複合不斉触媒系によるキノリンの触媒的不斉水素化を実現する。 この成果を基にして、キノリン以外の芳香族複素環の触媒的不斉水素化の開発を目指すとともに、ベンズアミド類の触媒的不斉水素化の開発に着手する。
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Causes of Carryover |
当初、平成27年度に、比較的長期利用できるガラス器具などの消耗品を購入予定であったが、研究室に在庫していた消耗品で当面は研究が推進できることがわかったため、その購入を見合わせることにした。また、交付内定通知を得た直後に研究室の移転があったため、その期間に使用する予定だった分の消耗品を年度内に購入する必要性がなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に、平成28年度前半の研究に使用する光学活性化合物や芳香族複素環等の薬品類やガラス器具類の購入に使用し、8月までに執行する予定である。
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