2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15KT0066
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
桑野 良一 九州大学, 理学研究院, 教授 (20273477)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2020-03-31
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Keywords | 金属微粒子触媒 / 有機触媒 / 水素化 / 選択性制御 / 不斉合成 / キノリン / テトラヒドロキノリン |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、ロジウム/炭素を水素分子活性化触媒とし、エナンチオ選択性制御のための光学活性ビナフチル骨格を持つスルホンイミド触媒の存在下で、2-フェニルキノリンの水素化を試みたところ、最高33% eeで目的とする1,2,3,4-テトラヒドロキノリンを得ることに成功した。これにより、有機触媒による金属微粒子触媒反応の遷移状態制御が可能であることを示した。しかし、再現性に問題があった。 この問題を解決するためにいくつかの要因を検証したところ、触媒として利用した光学活性スルホンイミドがカラムクロマトグラフィーによる精製の過程で金属塩となっている可能性が高いことがわかった。実際、文献の方法で合成した光学活性スルホンアミドを無水ジエチルエーテル中、塩化水素で処理すると、金属塩化物の沈殿が生じた。こうして塩化水素処理した光学スルホンアミドを有機触媒として用いると、良好な再現性で光学活性テトラヒドロキノリン生成物を得ることができるようになった。さらに、金属微粒子触媒としてルテニウム/炭素を用いることによって、水素化生成物の鏡像異性体過剰率が36% eeまで向上した(収率22%)。そこで、3,3'位が様々なアリール基で置換されたビナフチル骨格をもつ一連のスルホンアミドを合成し、それを用いてキノリンの水素化を試みた。その結果、3,5-ジ(t-ブチル)フェニル基をもつスルホンアミド触媒が本反応に最も高いエナンチオ選択性(36% ee, 収率22%)を示した。また、収率の観点では、4-(t-ブチル)フェニル基をもつスルホンアミドを触媒とした場合に高収率(収率92%)で生成物が得られたが、立体選択性は21% eeまで低下した。 次年度は、より効率的な触媒系の開発を目指し、キノリンよりも反応性が高い環状イミンを基質を用いて研究を推進する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の研究によって見出されたロジウム/炭素-光学活性スルホンイミド複合触媒系によるキノリンの不斉水素化について、突然、再現できなくなり、その問題解決のために反応溶媒や基質中に含まれる不純物、攪拌速度、金属担持触媒のロットなど様々な要因についてによる影響、数カ月を必要としてしまった。そのため、その後の光学活性ブレンステッド酸触媒の最適化に大きな支障が生じた。また、さらなる立体選択性の向上を目指して、様々な光学活性スルホンイミドやスルホン酸の合成に予想を超えて時間を要してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、芳香環あるいは芳香族複素環のエナンチオ選択的水素化に対する、新しいアプローチとして光学活性有機触媒-金属微粒子複合触媒系による手法を着想し、その実現に向けた研究を実施してきた。実際、この複合触媒系によってキノリンの不斉水素化の立体化学制御が可能であることを実証してきた。しかし、高いエナンチオ選択性を達成することはできなかった。そこで、今年度は、容易に調製可能な環状イミンを基質として選択肢、その水素化を光学活性ブレンステッド酸-金属微粒子複合触媒系を用いて試みる。これによって、より効率的にこの触媒系に有効な光学活性ブレンステッド酸を効率よく探索する。また、ここで見出される有効な光学活性ブレンステッド酸を利用して、キノリンの触媒的不斉水素化を改めて検討し、これまで研究してきた本不斉反応のエナンチオ選択性を大幅に改善する。
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Causes of Carryover |
前年度に見出されたキノリンの触媒的不斉水素化の結果について再現性が乏しいという問題に直面し、その問題解決のために購入済の薬品を利用して実施することが多くなり、当初の予想よりも薬品やエナンチオ選択性解析用の光学活性カラムの購入が少なくなったために、次年度使用額が生じた。 この結果生じた繰越金は、基質合成用の薬品や新たにエナンチオ選択性の解析が必要になる新規生成物の分析用の光学活性カラムの購入に充てる予定であり、8月下旬までに使用する予定である。
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