2016 Fiscal Year Research-status Report
陸域有機物の海洋流入増大に備えたリグニン動態追跡用分子マーカーの樹立
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15KT0123
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
大田 ゆかり 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, グループリーダー代理 (40399572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦田 勇二 埼玉工業大学, 工学部, 教授 (20399562)
渡邊 隆司 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (80201200)
西村 裕志 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (50553989)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | リグニン / 海洋微生物 / 芳香族化合物代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、海洋に流入する陸域由来の有機炭素(Terrestrial Organic Carbon; TOC)に含まれるリグニンの動態を追跡するために有用な分子マーカーを見出すことを目的とする。 H27年度までに、種々の分類学的系統群に属するバクテリアを中心とする微生物23株を用いて、リグニンに関連する合成モデル低分子芳香族化合物を添加して培養した際に生成される代謝物を網羅的に調査してきた。 H28年度には、これまでの合成モデル化合物での試験に加え、天然バイオマス成分として、植物から抽出したリグニン含有画分に対する代謝試験を実施した。本試験では、ユーカリ、スギ、タケ、イネの粉砕物から、ジオキサンを用いて抽出される成分を窒素雰囲気下で乾固し、これを粗リグニン画分として、微生物培養液に添加した。各粗リグニン画分から培養に伴い生成される代謝物をLCMSで分析、多変量解析を用いて、固有の代謝物の分子量情報の抽出を行った。その結果、用いた微生物の系統分類学的位置よりもむしろ、それぞれの微生物が持つ特徴的なバイオマス分解酵素活性に依存する一連の代謝物が見出された。さらに、これらの多様な代謝物の中には、被検基質の原料として使用した植物種が異なるにも関わらず、普遍的に生成される分子も見出され、リグニン動態追跡用マーカーの候補分子としての可能性が示唆された。候補となる分子の精密分子量情報から代謝物分子の組成式を計算し、天然リグニンの構造と照らし合わせて、その構造を予測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画通り、リグニンを含む天然バイオマス成分に対する種々の微生物代謝を実施し、各微生物が持つバイオマス分解酵素活性に依存した代謝物の多様性と普遍性を見出すことができた。また本研究の目的であるリグニン動態追跡用マーカーの候補となる分子を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
被検対象となった微生物の16S, 18SrDNAの塩基配列解析を行い、正確な分類学的位置を決定する。 リグニン動態追跡用マーカーの候補となる分子については、詳細な質量分析を進め、予測される構造を裏付けるための構造解析データを収集する。
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Causes of Carryover |
H28年度には、天然バイオマス調製に必要なマンパワーを確保するための補助員新規雇用を計画した。しかし、外部機関からのバイオマス提供やサンプル調製支援を受けることができたため、雇用は行わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度の研究実施により見出された新規分子マーカー候補の詳細な構造解析に必要な分析費として使用する。
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Research Products
(8 results)