2008 Fiscal Year Annual Research Report
原子炉起源,地球起源反電子ニュートリノと太陽起源電子ニュートリノの高精度精密測定
Project/Area Number |
16002002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 厚人 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 名誉教授 (00100818)
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Keywords | 原子炉反電子ニュートリノ / ニュートリノ振動 / 太陽ニュートリノ / 液体シンチレータ / 低放射線 |
Research Abstract |
原子炉反ニュートリノを使ったニュートリノ振動パラメータの精密測定、地球反ニュートリノ観測の統計精度向上、太陽ニュートリノ観測のための液体シンチレータの純化を行った。 反ニュートリノ観測においては、原子炉反ニュートリノと地球反ニュートリノのシームレスな統合解析・検出器の精密な較正・バックグラウンド反応率測定によって、ニュートリノ振動パラメータを高精度で決定することに成功し、また地球ニュートリノの観測精度も高めることに成功した。ニュートリノ振動の測定では、振動の2サイクルをはっきりと捉えるとともに、質量2乗差を2.7%の高精度で決定している。また、地球ニュートリノ観測においても2.8σの有意さあるいは37%の精度を実現しており、地球モデルとの比較も現実的に可能になっており、ニュートリノ地球物理を力強く切り開いている。 さらなる高精度化そして太陽ニュートリノ観測に向けて、二度の大規模な液体シンチレータの蒸留作業も行った。一度目の蒸留では、Po210によるC13(α, n)016反応を大幅に低減し、地球ニュートリノ信号の有意差を一段と高めることに成功した。さらに検出器内での対流の制御を緻密に行った二度目の蒸留作業では、Be7ニュートリノの観測エネルギー領域において純化前比で10000分の1以下のバックグランド低減を実現しており、3ヶ月から6ヶ月の観測期間で10%程度の精度でのBe7太陽ニュートリノの観測が可能となった。現在でも短寿命のBi210崩壊によるバックグラウンドの低下が続いており、さらに良質な太陽ニュートリノ観測が見込まれる。バックグラウンド低下により、観測閾値を350keV程度にまで下げることにも成功し、Bi212-T1208の同時計測によるバックグラウンド低減が可能となった。これによりB8太陽ニュートリノも3MeV程度の低エネルギーまで観測可能になった。
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