2004 Fiscal Year Annual Research Report
持続感染期におけるモノネガウイルス・ゲノムRNAの安定化機構の解析
Project/Area Number |
16017257
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
朝長 啓造 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (10301920)
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Keywords | ボルナ病ウイルス / 持続感染 / RNA / クロマチン |
Research Abstract |
ボルナ病ウイルス(BDV)の持続感染細胞を用いて、vRNP構成タンパク質ならびにゲノムRNAの核内動態を詳細に解析した。その結果、間期の細胞ではvRNPの集合体と考えられる顆粒状の構造体がヘテロクロマチンの近傍に観察された。コルセミドによる細胞周期の同調により、vRNP構成タンパク質とゲノムRNAは、分裂期クロマチンと共局在を示すことが明らかとなった。Chromatin-binding法ならびにRNPトランスフェクション法を用いた解析の結果、BDV vRNPは、細胞周期を通してクロマチンに結合しており、クロマチンより精製されたvRNPは複製能力を持つことが示された。BDVのminirepliconを用いた解析により、vRNPのクロマチンへの局在には、vRNPの最小構成単位であるN,P,LならびにRNAゲノムのみで可能であることも明らかとなった。 一方、クロマチンに局在しているvRNPは、クロマチンの構造変換に伴って、その安定性と転写・複製レベルを変化させる可能性が考えられた。クロマチン構造を変化させるActinomycin Dあるいはα-amanitin等の添加により、クロマチンに結合しているゲノムRNA量に変化は認められないものの、顕著な転写レベルの亢進が観察された。以上の観察は、BDV vRNPの転写調節に対する染色体のエピジェネティックな制御の関与を示唆した。 これまでの研究により、BDV vRNPがクロマチンに結合して安定化している可能性が示された。分裂細胞においては、クロマチンに接合することにより、核内での持続感染を安定に維持していると考えられた。ゲノムRNAがクロマチンに接合し娘細胞に分配されるという現象はRNAウイルスでは初めての発見であると同時に、細胞側においても細胞周期を通してクロマチンに局在するvRNPの存在は知られていない。また、宿主染色体のエピジェネティックな制御がRNAウイルスの転写に影響を与えているという現象も新規である。今後、クロマチンへの結合に関与する宿主因子の同定とともに、vRNPの複製とクロマチン構造との関連性について解明が必要である。
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