2004 Fiscal Year Annual Research Report
圧力を用いた蛋白質立体構造形成の遷移過程における水分子の寄与の解明
Project/Area Number |
16041226
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石森 浩一郎 京都大学, 工学研究科, 助教授 (20192487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 哲哉 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 活性化体積 / チトクロムc / 高圧下分光法 / 光誘起電子移動 / 水和 / 重水効果 |
Research Abstract |
蛋白質の立体構造形成時には、蛋白質と相互作用している水和水の挙動が重要である。しがし、水の挙動を観察することは困難で、現在まで十分な情報は得られてはいない。本研究では、水和水の挙動を反映する蛋白質の部分体積に注目し、チトクロムc (Cyt c)の立体構造形成過程の圧力依存性を測定することで蛋白質立体構造形成における水の挙動について、以下の成果を得た。 1.塩酸グアニンジン存在下,天然状態と変性状態の平衡状態にあるCyt cについて,その平衡定数の圧力依存性から,部分モル体積(V^〇)は天然状態のほうが約60ml/mol小さいことを明らかにした。天然状態では内部の空隙やアミノ酸残基間の相互作用の形成によりV^〇は増加するが、Cyt cの場合にはその効果よりも疎水性部位からの水和水の解離(脱水和)による体積減少の効果が大きいことが示された。 2.1.での体積減少をさらに検討するため、通常の水(^1H_2O)とは脱水和による体積変化が異なる重水(^2H_2O)を用いて同様な実験を行った。その結果、^2H_2O中でのCyt cの立体構造形成に伴うV^〇の減少は約20ml/molと算出され、^1H_2Oの場合より小さく、今回観測されたV^〇の変化は疎水的部位からの脱水和を反映していることが確認された。つまり、Cyt cの構造形成時には疎水性残基やヘムに水和した水が排出されることを実験的に示すことができた。 3.光誘起の電子移動反応を利用したCyt cの構造形成速度の圧力依存性から、その遷移状態の体積変化(活性化体積)は構造未形成時に比べて約15ml/mol小さいことが明らかになった。1.2.より、この体積減少も脱水和によるものと考えられ、Cyt cの構造形成のための遷移体形成においても、疎水性残基やヘムから水分子が解離することが必要で、この水和水の解離は構造形成のためのエントロピーを減少させる寄与があることを示唆している。
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