Research Abstract |
単一細胞内における光励起ダイナミクスの外部電場効果を明らかにすることを目的として,蛍光寿命イメージング及び時間分解電場蛍光分光システムの開発を引続き行った。緑色蛍光タンパク質(GFP)または蛍光色素が取込まれた細胞の蛍光寿命イメージングを測定し,蛍光寿命の値が細胞内の環境に応じて変化するかを調べた。また蛍光寿命の変化と発色団を取り巻くアミノ酸残基が作る外部電場の変化との関係について調べた。HeLa細胞にtudor-GFPを発現させ,細胞ストレスに対する蛍光寿命の変化についても検討した。tudor-GFPは,単量体だけではなく,GFPの凝集体を含んだ顆粒をも形成し,蛍光強度画像では顆粒部分が明るく観測される。試料調整直後では,GFPの蛍光寿命は細胞内で一様であり,約2.5nsであった。しかし栄養分を与えずに空気中に放置すると,時間とともに蛍光寿命が減少した。細胞ストレスに応じてGFP内の発色団分子の周囲の環境が変化し,蛍光寿命が減少したと考えられる。我々は発色団を取り囲むアミノ酸残基がつくる局所電場の変化に着目し,細胞ストレスに伴う蛍光寿命の変化の機構について考察した。モデル系としてGFPをPVA高分子膜中に埋め込み,GFPの蛍光寿命の外部電場効果について,測定を行うことに成功した。PVA中でのGFPの蛍光寿命は,0.5MV cm^<-1>の電場に対して,約0.5%減少することがわかった。この結果は,観測された蛍光寿命の減少は,アミノ酸残基がつくる局所電場が細胞ストレスに伴って増加したことに起因することを示唆している。高度好塩菌をpH感応色素によって染色し,蛍光寿命から細胞内pHを検出できることを示した。また高度好塩菌を含んだ溶液に電極を導入し,外部電場の印加によって,細菌がその形状を保ったまま会合体を形成することがわかった。
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