2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16072213
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原田 明 九州大学, 大学院総合理工学研究院, 教授 (90222231)
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Keywords | 単一細胞 / 無蛍光性化学種 / 高感度検出 / 光熱変換分光法 / 顕微熱レンズ検出 / 多色増幅効果 / 多光子イオン化 / 化学種分布 |
Research Abstract |
生体を対象とした計測における究極の目的の一つに、生きた単一の細胞中にある任意の標的化学種を一つずつ識別して、その動的挙動を観測することがある。近年、特に生体関連物質の単一分子検出により生命活動の根幹に関わる新たな知見が得られ始めているが、特殊な例外を除くと単一分子の計数は単純溶液中においてさえ強い蛍光性を持つ特定の化学種のみでしか実現していない。一方、アミノ酸・核酸塩基・ホルモンなど生命科学に深く関与する化学種の多くは、本来蛍光性分子ではない。本研究では、申請者らが開発してきた光熱変換分光および光イオン化分光の計測手法を発展させることで、生きた単一細胞内にある無蛍光性化学種の高感度分布測定の実現とそれに基づく、新しい生命物理化学分野の開拓を目的とした。 本年度は、細胞内無蛍光性化学種の実空間分布測定のために開発した紫外励起光熱変換顕微を用いて、酵母菌を測定対象として検討した。本顕微鏡では、260nm励起で光熱変換顕微鏡像(強度像および位相像)と780nmの透過光像を同時計測できる。また、CCDカメラを取り付けることにより大まかな観測位置を特定できるシステムに改良した。光源として218-230nmの光を使うことも可能としている。観測された光熱変換強度像では、励起波長での光吸収量の空間分布に対応する画像を与え、無染色の状態でも個々の酵母菌を識別することが可能であることが分かった。光熱変換位相像は、酵母菌とその周辺部での熱特性の違いを反映すると推測される画像を与えた。紫外線照射下では細胞損傷が問題となるので、この点についても検討を行い、観測時間内に細胞死を迎えることはないと結論された。ただし、紫外線照射後には細胞分裂に支障が生じ約3回の細胞分裂周期となる12時間程度の後に細胞死を迎えると推定される。研究を総合してまとめ、学術研究会や学術論文誌上で公表した。
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Research Products
(5 results)