2004 Fiscal Year Annual Research Report
光水素発生デバイスにおけるエネルギー制御空間の開拓
Project/Area Number |
16074216
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
酒井 健 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (30235105)
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Keywords | 水素エネルギー / 太陽光エネルギー / ビオローゲン / 人工光合成 / 分子デバイス / ナノデバイス / ルテニウム錯体 / 白金錯体 |
Research Abstract |
水素発生触媒部位の基礎研究とし、各種の新規多核錯体の合成、構造決定、電子状態評価、及び触媒機能評価を行った。水素ガス生成に関与すると期待されるd_<z2>軌道が立体阻害を受けることにより、触媒活性がほぼ消失する系があることを発見した(例えば、Pt(II)(pyridine)_2部位を持つ錯体は低活性であることを見出した)。その傾向は、DFT計算によっても支持される結果が得られた。また、負電荷の配位子を有するPt(II)Cl_2部位を持つ錯体では、d_<z2>軌道の不安定化が促進され、触媒活性が向上することを見出した。光増感部位としてRu(bpy)_3^<2+>誘導体と白金錯体部を同一分子中に有する光水素発生デバイスに関しては、まず光触媒機能の波長依存性について明らかにした。光水素発生デバイスは、水溶液中(0.1M酢酸緩衝溶液,pH=5)、犠牲還元試薬EDTAの共存下、キセノン灯を照射することにより、水からの水素ガス生成反応を促進する。光干渉フィルターにより紫外光(<390nm)を除去した場合、全体の吸光量が低下するにもかかわらず、水素生成量はむしろ増加することが分かった。これにより、光水素発生がRu錯体部のMLCT遷移によって誘起されること、及び錯体の紫外光分解が抑制されることが判明した。他方、このデバイスの断片構造を持つ白金単核錯体は、[Ru(bpy)_3]^<2+>(or[Ru(bpy)_2(5-amino-phen)]^<2+>)、及び2mM MV^<2+>の非存在下において行ったところ、光水素生成能が消失した。これらの比較にから、2種の錯体分子がペプチド結合したことによって単一分子光水素発生機能が発現したこと、及びその機能が光分解物によるものではないことが確認された。この他、以前合成した各種白金ルテニウム多核錯体(光水素生成機能を示さなかったもの)と光水素発生デバイスに関し、光吸収及び発光特性、ならびに電気化学的性質の比較検討を行った。その結果、Ru(bpy)_3^<2+>特有の発光および電気化学特性がある程度保持されていることが、この単一分子光水素発生デバイスの機能発現の鍵を握っていることが示唆された。光水素発生デバイスの光触媒反応機構の解明を目的とし、光水素発生速度デバイス濃度依存性を調べた。測定はデバイス濃度が0.01-0.2mMの範囲で、光照射開始後30分間の水素生成速度で比較した。MLCT吸収帯で全吸収の条件を満たす0.1-0.2mMの濃度範囲で、光水素生成速度はデバイス濃度に一次の相関を示すことが分かった。これにより、速い初期過程によって生じる反応中間体がもう一分子のデバイスと反応する過程が律速段階であることが示唆された。その他、各種白金単核錯体に対する量子化学計算を、溶媒和を考慮した条件にて行い、水素発生触媒活性と分子構造やレドックスとの相関についても比較検討を行った。
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Research Products
(8 results)