Research Abstract |
本特定領域研究では,当初からの目的に従い,わが国の著作権法・商標法・不正競争防止法に関する各国の制定法について,国際諸条約上のルール及び外国法との比較に基づいて検討を行った。わが国知的財産法の特徴を踏まえた上で,世界に向けて情報発信すべき内容とは何かという問題関心に立脚した考察を展開した。2010年度には,本研究の成果を踏まえて,国際比較法アカデミーにおいて,日本著作権法の現場について,小島がナショナルレポーターとして報告を行った。 また近時,国境を越えた知的財産紛争における国際裁判管轄及び準拠法決定の問題(これは国際私法と密接な関係を有する)についての重要性が高まっている。これは近時のGoogle Books問題などを見れば一目瞭然である。従来から説かれてきた,いわゆる「属地主義」を墨守していたのでは,現代的な問題に対する回答を与えることは難し。これら国際私法と関係する問題については,アメリカ法律協会(ALI)に加え,ミュンヘンとハンブルクのマックス・プランク研究所(MPI)が「原則」をまとめ,成果を公表している。本特定領域研究では,それら条約提案作成の動向について情報収集し,仔細に調査・批判的考察を行い,わが国の状況を反映した,よりよい対案を作成するべく検討を重ねてきた。その結果,国際知的財産紛争における国際裁判管轄・準拠法・外国判決の承認執行についての立法提案を作成することとした。2009年5月に,ALI及びMPIの原則作りに携わった研究者を交えて,東京で国際シンポジウムを開催し,2010年度に,成果を英語と日本語の双方で発表した。 また,法務省で進められた国際裁判管轄立法について,本研究における成果を踏まえ,2010年度において,有識者とともに批判的に検討を行った(業績掲載のLaw and Technologyにおける座談会)。
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