2006 Fiscal Year Annual Research Report
認知的視点から見た高齢者にとっての使いやすさ:エラー反復現象を中心として
Project/Area Number |
16091211
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
原田 悦子 法政大学, 社会学部, 教授 (90217498)
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Keywords | 認知的高齢化 / エラー反復現象 / 二重課題 / 課題切替課題 / 刺激顕在性 / インタフェースデザイン / エラー分析 / 人-人工物間相互作用 |
Research Abstract |
高齢者ユーザがIT機器利用時に見せるエラー反復現象のメカニズムを明らかにし,それを防ぐインタフェースデザイン・ガイドラインを明らかにするために,漢字選択課題(文中カタカナ部分に該当する漢字を4選択肢から選択する課題)を用いた心理学実験を行った.特に注意負荷との関係を検討した結果,1)高齢者・若年成人のいずれも,誤答(同音異義語)を答える「より複雑な,高負荷な課題条件」では,正答を答える条件よりもエラー率は増大したが,エラー反復現象は生じなかった,しかし2)両群とも,「正答を答える」試行と「誤答を答える」試行が3試行毎に変化する課題切替条件では,エラー反復を示した.若年成人群では条件が切り替わった第1試行でのエラー率が高くなる「スリップ」も見られたが,両群に共通して「誤答試行におけるエラー反復現象」がみられた.また3)AIST版認知的加齢テストのデータ(高齢者374名)から,課題切替課題において高得点群と低得点群を抽出し,漢字選択課題での成績を比較した処,「課題切替条件下でのエラー反復」は低得点群の方が有意に高いことが示された.また,4)高齢者群において,明に正答/誤答教示を提示し「今の試行はどちらを答えるべきか」について記憶を保持する必要がない場合には,エラー反復現象が見られなかった. 以上および前年度までの「若年成人群で二重課題による注意分割時にエラー反復が見出された」結果から,エラー反復は「複数の課題目標を同時に保持しなければならない」状況において発生するものと考えられた.すなわちIT機器のインタフェースデザインが,高齢者にとって課題の間接性を高くしている場合に,エラー反復が発生しているものと考えられる.全てのユーザにとって,操作や表示が直接性・透明性が高いデザインにすることがエラー反復現象を抑止することができるものと考察された.
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