Research Abstract |
本研究は,90年代後半より急速に進展した赤外線観測による星周辺の岩石的粒子の観測の結果をふまえ,固体粒子形成カイネティクスとその物理的基礎を実験的に理解し,その結果を用い様々な星周環境における粒子の成長を理論的に予測し,星の進化と粒子進化の関係を解明することをめざしている.初年度においては凝縮実験装置の凝縮場部分の開発をおこない,2年次である本年度はガス発生部分の開発をめざした.当初計画では炉心管をもつ外熱式のものを計画したが,よりクリーンな実験を可能とするため,電子銃方式(e-gun)を併用することとした.両システムは取り外し可能で,随時交換可能に設計した.導入した電子銃により珪酸塩物質の凝縮実験を開始した.装置のキャリブレーションを兼ね,SiO2を試料とする実験をおこなった.電子銃は局所加熱システムであるため,定常的フラックスを得るには不適切であるが少量試料の加熱によるガス発生に適しており,その結果,tridymiteの凝縮物を得ることに成功した.次にフォルステライトの凝縮をおこない,広い条件においてフォルステライト.さらに低温では非晶質珪酸塩の凝縮物をえた.また,既存装置を用い,より単純かつ宇宙科学的に重要な金属鉄の凝縮実験をおこない,凝縮係数をガスフラックスの関数として決定することに成功した.凝縮物理の理解のため,前年度導入した走査型電子顕微鏡にエネルギー分散型分光器を導入し,凝縮物の観察と分析をおこない,結晶成長に伴うステップの観察に成功した.この結果,凝縮物が実験中の再結晶などによるのではなく,気相から直接凝縮したものであることが確実となり,凝縮物理の理解に大きな前進を得た.現在結果の解析を進めており,凝縮係数の決定をおこなう予定としている.
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