Research Abstract |
本研究は,90年代後半より急速に進展した赤外線観測による星周辺の岩石的粒子の観測の結果をふまえ,固体粒子形成カイネティクスとその物理的基礎を実験的に理解し,その結果を用い様々星周環境における粒子の成長を理論的に予測し,星の進化と粒子進化の関係を解明することをめざしている。本年度の成果として:(1)本研究の前半を費やして開発を進めてきたMBE型凝縮実験装置が稼働し,本年度は宇宙における固体物質にとって最大の分別をもたらしうるMg-Si-O系の実験に成功した。これまでにおこなった範囲では,広い条件において熱力学的平衡において想定されるエンスタタイト生成反応は進行せず,フォルステライト基盤上に非晶質SiOが直接凝縮した。このことは,想定される晩期星周辺の放出ガスの温度圧力条件においてはこの反応は進行せず,Siに富む非晶質ケイ酸塩を凝縮させることを表している。(2)本研究により開発を行った赤外線加熱型凝縮装置も稼働を開始し,フォルステライトを加熱して発生したガスの凝縮実験をおこなった。この結果,比較的低温場における凝縮物は非晶質Mgケイ酸塩で,それよりやや高温において金属Siが凝縮した。ガス組成の解析結果と合わせ,希薄環境ではケイ酸塩の凝縮が抑制されることが判明した。この結果は,晩期星星周環境においてはケイ酸塩凝縮温度がきわめて低温になり,その結果結晶質物質が形成されないことを意味している。(3)前年度より引き続き,ダスト形成における不均質核形成の役割評価をおこなった。本研究と同時に進めている金属鉄凝縮実験の結果によると,金属鉄はラフな表面の酸化物に対してよいぬれ性を示しその結果,原始太陽系円盤の環境下では,先に凝縮するフォルステライトの上に不均質核形成することになり,惑星形成過程に大きな影響をあたえることが予測される。
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