Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
匂坂 芳典 早稲田大学, 大学院・国際情報通信研究科, 教授 (70339737)
田嶋 圭一 法政大学, 文学部, 専任講師 (70366821)
津崎 実 京都市立芸術大学, 音楽学部, 助教授 (60155356)
山田 玲子 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 人間情報科学研究所, 主幹研究員 (30395090)
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Research Abstract |
本研究の目的は,音声の韻律要素の中から時間的側面の評価について,人間が内的に行う処理を模擬するモデルを構築することである。平成16年度は,海外共同研究者(カナダ,タイ)との協力体制を確立するとともに,言語に依存しない聴覚の基礎過程を扱う心理物理レベルと言語の違いに依存する処理を扱う言語レベルの2段階でモデル構築に着手した。さらに,モデルを検証するためのfMRIを用いた脳活動観測実験を立ち上げた。主要な結果は以下のとおりである。 心理物理レベルでは,知覚的リズム形成の従来モデルであるラウドネスジャンプモデル(加藤,1999)を起点として,同モデルで前提としていた音韻セグメンテーションを一切必要としないモデルのデザインに取り組んだ。従来は予め与えられた音韻境界に知覚的リズムの参照点の候補を設定していたが,新モデルでは聴覚の特性を精密に再現することで,知覚的に特に目立つ音響的変化を予測し,それを参照点候補とする。予備的検討の結果,従来法では検出できない参照点候補の自動抽出が可能であることを確認した。 言語レベルでは,時間長変動により辞書的意味が変わる日本語特殊拍を対象として,知覚特性に及ぼす母語の影響を調査した。カナダの共同研究者から研修研究員を迎え,特殊拍同定に対する発話速度の効果を調べた結果,母語話者では速度に比例した適応的な反応が見られるのに対し,非母語話者では固定的な反応が支配的であることが明らかになった。一方,音声の時間構造と他の韻律要素である高さ(FO)との相互作用を実験的に検討した結果,FOの時間変化パターンを平均的高さと形状の2変数で記述することで,話者の発話意図をモデル化できるとの見通しを得た。
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