Research Abstract |
表面弾性波フィルタの特性改善に必要なタンタル酸リチウム(LT)基板の温度補償のためには,熱膨張係数の低いシリコンないしは酸化膜付シリコン基板をLT基板に直接接合するのが有効である.本年度は,酸素RIE処理と窒素ラジカル処理を組み合わせたシーケンシャルプラズマ活性化手法による直接接合の適用可能性を検討した.最終的に,達成すべき接合として1×1mmサイズのダイシングに耐えうる強度の実現を目標とした. 具体的には,シーケンシャルプラズマ活性化手法におけるプラズフ照射時間プラズマ出力パラメータによる接合強度の変化,接合後の加熱処理による接合強度の変化を評価した.その結果,接合強度は,シリコン/LT接合と酸化膜付シリコン/LT接合の両者では0.15J/m2程度で大きな差は無く,ブレードの挿入時に母材が破壊するほど強い酸化膜付シリコン同士の接合に比較すると小さいことがわかり,シーケンシャルプラズマ活性化の効果が劇的な酸化膜付シリコン同士とは全く別の傾向を示した.また,酸化膜付シリコン/LT接合の接合強度は,酸素RIE処理時間が長くなるにつれて約1MPa以下まで低下するのに対し,窒素ラジカル処理時間が長いと増加するが,照射時間がある時間以上になると約4MPaで一定となる.さらに,酸化膜付シリコン/LT接合の接合強度は,酸素RIE処理でのプラズマ出力が約50Wのところで最大(約8MPa)となり,それ以上の出力の増加では逆に4MPa以下まで低下する. 最終的には,最適なシーケンシャルプラズマ活性化条件を得た. シーケンシャルプラズマ活性化接合法によるシリコンあるいは酸化膜付シリコンとLT接合においても,シリコン同士あるいは酸化膜付シリコン同士での接合と同じように,O-H基およびO-N基の生成によって接合が行われる.しかしながら,LTに含まれるTaイオンによってO-H基およびO-N基生成が阻害されるため,不十分な強度での接合がしか行われないと考えられる.また,加熱処理時,加熱試料が大きいほど,低い加熱温度で接合基板が割れるのは,基板に存在している直径数ミリのボイド部に熱応力が集中することによると考えられる. 上記の条件にて大気中での接合を行い,さらに酸化膜付シリコン/LT基板に対して低温(160℃)での加熱処理を行うことで,研究目的において設定した1×1mmダイシングに耐えうる強度を大気中で接合を行い低温加熱のみで実現することができた.
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