2007 Fiscal Year Annual Research Report
新たな東地中海地域像の構築-民族・宗派対立と人間移動
Project/Area Number |
16201049
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
黒木 英充 Tokyo University of Foreign Studies, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20195580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯塚 正人 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (90242073)
臼杵 陽 日本女子大学, 文学部, 教授 (40203525)
佐原 徹哉 明治大学, 政治経済学部, 准教授 (70254125)
土佐 弘之 神戸大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (70180148)
間 寧 東京外国語大学, 大学院・地域文化研究科, 研究員 (70401429)
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Keywords | 地中海 / 民族問題 / 宗教・宗派問題 / 安全保障 / 近現代史 / イスラーム / 中東 / バルカン |
Research Abstract |
当該年度は、研究取りまとめに向けて、分担者の最終海外調査、研究協力者による海外調査、総括的な国際ワークショップ開催、前年度から引き続いてのオスマン古地図デジタル化を行った。 海外調査は、調査地をトルコとレバノンに絞って実施した。トルコについては、オスマン帝国末期の民族問題をバルカンとアナトリアの比較を念頭に置いた調査を佐原徹哉氏が、現代の政府のイスラーム政権の宗教政策と社会問題の調査を間寧氏が、トルコのEU加盟問題がヨーロッパ諸国の政治に与える影響についての調査を佐藤幸男氏が、それぞれ実施した。一方、レバノンについては、混迷を深める内政問題と宗派体制の関係について黒木が、またレバノン国内のパレスチナ難民の国籍取得問題について研究協力者の錦田愛子氏が調査した。いずれの国においても、国内外を問わぬ出稼ぎ・移民・難民といった人間移動が、従来の国家構成の基本原則(トルコにおける世俗主義、レバノンにおける宗派体制)を揺るがせ、それぞれの国家の内政に深刻な問題を引き起こしていると同時に、国際的問題に対して大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。特にレバノンについては、国際ワークショップ「レバノン内戦再考」にて、イスラエル・ハイファ大学教授カイス・フィッロ氏と、東外大AA 研客員教授アーイダ・カナファーニー=ザハール氏による報告と討論を通じて、内戦が生み出した住民の強制的移動がもたらした記憶の消滅・回復の問題が浮き彫りとなり、ミクロの社会において現在なお衝突する利害と、それを調整する国家機能の再構築の必要性が指摘され、この問題を各分担者・協力者が研究対象の地域・政治空間にフィードバックすることとなった。古地図のデジタル化進展による資料の増加は、古地図相互の比較と共に、人間移動の歴史的空間把握の基本素材として有効に機能した。
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Research Products
(32 results)