2005 Fiscal Year Annual Research Report
芸術終焉論の持つ歴史的な文脈と現代的な意味についての研究
Project/Area Number |
16202001
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
栗原 隆 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30170088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 尚武 鳥取環境大学, 大学院・環境情報学研究科, 教授 (10011305)
座小田 豊 東北大学, 大学院文学研究科, 教授 (20125579)
伊坂 青司 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (30175195)
森本 浩一 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20182264)
城戸 淳 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 助教授 (90323948)
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Keywords | 芸術終焉論 / ヘーゲル哲学 / 美学 / ロマン主義 / 解釈学 / 美学革命 / 歴史意識 / 美的判断 |
Research Abstract |
本年度は、2005年8月6日(土)に、新潟市の新潟大学駅南キャンパスCLLICにて、ならびに8月7日(日)には、「クロスパルにいがた」にて、岩城見一氏をお招きして、市民公開の形で研究会を開催した。研究分担者の間の共通認識を高めるために資すること大であった。また海外研修は7月2日から10日までの間、主としてドイツのケルン大学で、クラウス・デュージング教授の下に研修していた座小田豊とともに、栗原並びに城戸が教授の指導を受け、知見を深めることが出来た。また、10月に来日したヴァルター・イエシュケ教授と山崎純が打ち合わせを重ね、この共同研究のために、芸術終焉論をめぐるテーゼを新たに書き下ろしていただくなど、極めて有益な示唆を得た。 研究代表者の栗原隆は、芸術を論じる芸術哲学が成り立つにはもとより、対象である芸術は終わっていなければなかったといういわば解釈学的な問題圏に芸術終焉論を定位することによって、芸術終焉論の合理的な解釈と必然的な問題設定に光を当てた。これに伴ない、ヘーゲルと同時代の哲学者、アストの解釈学を本邦初訳として紹介した。 分担者の加藤尚武は、ヘーゲルの「絶対者」という概念がスピノザの実体概念に強く影響を受けていて、その絶対者の自己認識に参入する精神の形式の一つが芸術であるという実体観が、ヘーゲル美学の原型であることを明らかにした。また、事実性としての歴史に優位するヘーゲル的な歴史性の哲学が、過去の権威化と相容れなかったことを明らかにした。 分担者の座小田豊は、ヘーゲル研究の第一人者、クラウス・デュージング教授のもとで研修に努めて、ヘーゲルの「芸術哲学講義」(1820/21)を受講した学生の、余り知られていないノートの邦訳を行なった。 分担者の伊坂青司は、ベルリンでの研修から、どいつ・ロマン主義の画家、C・D・フリードリヒの絵画作品に、かなり明示的に、「闇」と「悪」の原理が表現されていることに着目、理念や感情を表象させるところに絵画の役割を明確に捉えた。その意味では逆に、哲学の前では芸術が「終焉」しなければならないことを明かすことになった。 分担者の城戸淳は、ドイツにて研修を行なうとともに、カント『判断力批判』における「崇高の分析論」の読解を通じて、カントの崇高論(=批判的崇高論)と、ドイツ観念論美学における崇高理解(=形而上学的崇高論)との距離を測定しようとする研究を行なった結果、共通の問題設定が見られることを確認した。 分担者の森本浩一は、芸術終焉論に現代性があるとすれば,それは,芸術の歴史性についての主張のゆえではなく,「芸術」という観念を支えてきた「語り」が終わるという意味においてであると見定めた上で、「芸術終焉論の現代的意味」を「反終焉論」の方から検討した。
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Research Products
(16 results)