2006 Fiscal Year Annual Research Report
近代のイングランドの近隣英語圏における啓蒙思想と経済学形成の相互関連の研究
Project/Area Number |
16203013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 秀夫 京都大学, 経済学研究科, 教授 (40148599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大倉 正雄 拓殖大学, 政経学部, 教授 (10152092)
生越 利昭 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (30094527)
竹本 洋 関西学院大学, 経済学部, 教授 (10103227)
中澤 信彦 関西大学, 経済学部, 助教授 (40309208)
壽里 竜 関西大学, 経済学部, 助教授 (20368195)
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Keywords | 啓蒙 / 経済学 / ヒューマニズム / 自然法 / 共和主義 / 大ブリテン経済圏 / スコットランド / アイルランド |
Research Abstract |
この共同研究は、隣接分野の華々しい大ブリテン研究から刺激をうけつつ、17、18、19世紀における大ブリテンと周辺、イングランド、スコットランド、アイルランド、アメリカの4地域(Anglo-America Semisphere 英語圏)における啓蒙思想と経済思想の関係と展開を比較しつつ解明した試みである。もっと望ましいのは英語圏だけではなく、さらに広い視点をもった接近法をとることであろうが、それは次の課題であり、今回は大ブリテン経済圏(英語圏)における啓蒙と経済思想の展開のコンテクスト分析を行うことを目指した。 かつて経済学という新しい学問は、重商主義を批判する自然法思想から、いわば単系発生的に生まれたといった理解が通説となっていた時代があったが、今日ではそのような単純な理解はおよそ支持されていない。経済学の興隆と発展を他の知的領域、とくに政治と法、歴史との関係に注目して、また国内的な文脈だけではなく国際的な文脈においても多元的に分析することの重要性が指摘されている。したがって、この研究では、国際的、学際的な視野を重視して、ダイナミックに経済思想の展開を法、政治、歴史(思想)との関連で、すなわち、インターディシプリナリー(学際的)に析出することを目指した。啓蒙思想研究も多様なプロジェクトとしてそれぞれの地域の個別性に注目する方向へ展開されてきている。 この研究では経済学は人文学(ヒューマニズム)として成立したという理解に立つ。したがって、啓蒙思想と経済学形成の相互の間に緊密な連関を見いだせるという主張を掲げる。この点では、啓蒙思想家であった自然法思想家の貢献が確かに大きい。経済学者という専門家がいて経済学を構築したのではなく、道徳哲学者・法学者・政治思想家などが競って、新しい社会の原理を求めた。下層階級にまで人間としての権利を保証するという、新しい時代の要請を啓蒙の課題として受け止めてそれに応えて、彼らが次第に形成したものが立法者の学問としての経済学であった。 したがって、この研究では、歴史的出来事としての啓蒙のプロジェクトにおける経済学の成立を象徴的事件として理解し、その画期性に注目する。しかも、そのような営みはスコットランドにおいて際立っていたとしても、他の英語世界に存在しなかったわけではない。したがって、スコットランド的モーメントだけでなく、他の英語世界のモーメントにも注目しなければならない。そのために最新の歴史研究の成果を吸収し、多元的で、複合的な大ブリテン圏における帝国形成を視野に置くとともに、啓蒙のプロジェクトの多様性、祖国愛と共和主義、急進主義の歴史的展開にも着目し、こうした要素との関係に照明をあてなければならない。この共同研究では不十分ながら、このような同時的、多発性とダイナミックな思想の伝播、接触という歴史的事件として、経済学の形成を多元的文脈的に、また多元的パラダイム的、学際的に啓蒙のプロジェクトの不可欠な一環として取り上げた。
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Research Products
(25 results)