2006 Fiscal Year Annual Research Report
構造改革特区に対する事前事後評価および評価手法確立のための理論的・実証的研究
Project/Area Number |
16203017
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
辻 正次 兵庫県立大学, 応用情報科学研究科, 教授 (90029918)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 直人 大阪大学, 大学院・国際公共政策研究科, 教授 (90243146)
鈴木 亘 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (80324854)
福重 元嗣 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (10208936)
井伊 雅子 一橋大学, 国際・公共政策大学院, 教授 (50272787)
岩本 康志 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (40193776)
|
Keywords | ITの進展指標 / AHP / 在宅健康管理システム / 混合治療 / 離散型比例ハザード・モデル / 生活習慣病果 / 医療費削減効果 / 国民健康保険 |
Research Abstract |
今年度では、研究計画に従って、特区評価のための理論的・実証的手法の研究と構造特区の効果に関する基礎調査を行った。理論的手法については、IT特区に関して、各地域が特区申請を行う場合、申請の内容と共に各地区でのITの状況を比較勘案する必要がある。IT特区の認可については、地区がITについて先進的であるのか、あるいは発展途上であるのか、ITの進展状況を判断する必要がある。研究では、IT進展のインデックスの作成について、AHP(Analytical Hierarchical Process)の手法を援用して、(1)各地区でのIT機器・インフラに関する変数や、(2)e-ビジネスやサプライチェーンなどの応用ソフト、これらから総合的な指標を考案した。この指標を用いてITの推進要因を特定化した。 今ひとつの研究は医療特区分析の基礎となる特区による医療費の削減効果に関するアンケート調査を実施した。特区の経済効果としては、特区によりどれだけの経済効果が生まれるのか、これを推計することが重要である。研究では、ITを用いた在宅健康管理システムを取り上げ、このようなシステムが特区により自由に用いられると、その導入により特区では実際にどれだけの医療費が削減できるのか、この効果を国民健康保険からの支払い額から推計した。テストサイトとして、福島県西会津町を選択し、健康・医療、在宅健康管理システムの使用年数に関するアンケートを実施し、同システムのユーザー199名、非ユーザー209名の有効回答を得た。これらの個人について、平成14〜18年までの5ヵ年間に医療機関から国保へ支払い請求がなされたすべてのレセプトについて、入院・外来・その他(投薬)の類別、主疾病名、主疾病診療開始年月日、主疾病実日数、全疾病についての診療点数を点検した。これに基づき、仮説1:生活習慣病に関する医療費については在宅健康管理システムのユーザー方が非ユーザーよりも少ない、仮説2:テレケアの利用期間が長いほど生活習慣病の医療費は小さくなる、この二つを検討した。回帰分析の結果、医療費では、5ヵ年を通じて、ユーザーの方が非ユーザーよりも大きかったものの、疾病を心臓疾患、高血圧・動脈硬化、糖尿病、脳溢血・脳梗塞・脳卒中といった生活習慣病に限定すると、一人当たりのユーザーの医療費が非ユーザーのそれを下回った。また、ユーザーのそれらに関する医療費の増加率は平成16年を除きいずれの年もマイナスとなった。ユーザーの生活習慣病に関する医療費は、非ユーザーのそれよれも一人当たり年間15,302円(年間20.7%)少ないことが分かった。さらに、80歳以下のユーザーにっいては、在宅健康管理システムの利用年数が1年延びると、生活習慣病の医療費が一人当たり年間13,719円(年間約18.7%)減少することが示された。以上から、西会津町の在宅健康管理システムは医療費全体ではないが、生活習慣病に関連する医療費を減少させる効果があると結論できる。
|
Research Products
(15 results)