2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16204030
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
東 俊行 首都大学東京, 都市教養学部, 教授 (70212529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田沼 肇 首都大学東京, 都市教養学部, 助手 (30244411)
小牧 研一郎 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (40012447)
畠山 温 東京大学, 総合文化研究科, 助手 (70345073)
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Keywords | チャネリング / コヒーレンス / 重イオン |
Research Abstract |
結晶中を通過する高速イオンは,結晶中の原子列及び原子面を横切ることで周期的な振動電磁場を感じる.これは一種の疑似光子と見なすことができ,このエネルギーがイオンの遷移エネルギーと一致するとき,イオンは共鳴的に励起される.これをコヒーレント共鳴励起(Resonant Coherent Excitation : RCE)と呼ぶ.我々は,観数100MeV/uの軌道電子を基底状態に持つArやFeイオンを,Si結晶中に通過させて,軌道電子を基底状態から励起準位にRCEを通じて励起させた.本研究では,特に厚さ1μmという極薄結晶と,高エネルギー重イオンの組み合わせを採用することにより,結晶中でのイオン化を大幅に抑え,非チャネリング条件下におけるRCEを観測することに初めて成功した.このとき,イオンは3次元結晶実空間中において特定の原子面を横切る際の周期によって励起されるため,いわば,3次元コヒーレント共鳴励起(3D-RCE)といった状況が達成されたことになる. 今年度は3D-RCEを利用して,Λ型3準位間の2つの遷移を同時励起する2重共鳴を試みた.3D-RCEでは,イオンエネルギー以外に2方向への結晶角度回転の自由度が生じるため,イオンエネルギーを変化させることなくこのような同時共鳴実験が可能になる.具体的にはヘリウム様のAr^<16+>イオンを用いて,基底準位の1s^21^1S準位から1s2p2^1Pへ励起すると同時に1s2p 2^1Pから1s2s2^1Sへの遷移を起こさせて,基底状態からは禁制である準位への励起を行った.後者の遷移エネルギーに一致する条件下で,前者の遷移エネルギー付近で結晶を回転させ,その際の通過イオンの荷電分布を測定することにより,共鳴プロファイルを測定した.その結果,同時励起2重共鳴条件では共鳴ピークが2つに分裂する様子が観測された.これは,我々の利用する2^1Pから1s2s2^1Sへの遷移を引き起こす結晶電場の強度が強いため,この2つの状態が振動電場によって結合したドレスド原子状態が形成されていることを示唆しており,量子光学分野でしばしば観測されるAutler-Townes2重項に相当する.また,3D-RCEに伴う脱励起X線放出の異方性を観測することにより,振動電場の変更方向に関する詳細な情報も得られた.このようにX線領域とVUV領域のレーザー光を同時照射することによってひき起こされる3準位系のコヒーレントなダイナミクスを研究することが可能になったと結論される.
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