2005 Fiscal Year Annual Research Report
赤外励起ナノスケール表面分光測定装置の開発と高分子超薄膜-水界面の解析への応用
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16205015
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
北野 博巳 富山大学, 工学部, 教授 (40115829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井出 誠 富山大学, 工学部, 助手 (70334711)
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Keywords | 振動分光 / 双性イオン / O-H伸縮振動 / 抗血栓性 / 両性高分子 / 生体適合性 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、種々の高分子材料近傍の水構造について、O-H伸縮振動帯を対象として検討を行った。双性イオン型のカルボキシベタインモノマー(CMB)を単独で、あるいはn-ブチルメタクリレート(BMA)と共に重合させた物質を、それぞれ水溶液あるいは薄膜とし、その近傍に存在する水構造を、振動分光法により調査した。いずれの系においても、水構造に対する擾乱効果は、水溶液中の高分子電解質、あるいは薄膜系のBMAや2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)等からなる高分子に比べて遙かに小さかった。さらにCMBとBMAの共重合体薄膜について血小板の付着数や、補体活性化、さらには線維芽細胞の付着数を調査したところ、極めて良好な抗血栓性、生体適合性を有することが明らかとなった。水構造に対する擾乱効果の少なさと、抗血栓性、生体適合性との間には明確な相関があることが強く示唆された。 さらに、モノマー残基中に双性イオン基を有するCMBに替えて、カルボキシル基を有するメタクリル酸(MA)と、4級アンモニウム基を有する3-メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(MAPTAC)の共重合体(両性高分子)について、その組成と近傍の水構造との関係を調査した。共重合体の組成やメタクリル酸残基の中和度を変化させて検討したところ、高分子側鎖の正負の電荷数がほぼ拮抗した場合に、水構造が最も良く保持される(自由水に近い構造をとる)ことが明らかとなった。 これまでに、アミノ酸や、スルホベタインポリマー、ホスホベタインポリマー等で見出した、正負電荷の近接による水擾乱効果の低減が普遍的なものであること、また医用材料としては、「水に優しい」双性イオン型高分子が有効であることが、水構造という物理化学的な特性評価から示された。
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Research Products
(7 results)