2006 Fiscal Year Annual Research Report
赤外励起ナノスケール表面分光測定装置の開発と高分子超薄膜-水界面の解析への応用
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16205015
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
北野 博巳 富山大学, 理工学研究部(工学), 教授 (40115829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
源明 誠 富山大学, 助手 (70334711)
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Keywords | 振動分光 / O-H伸縮振動 / 両性高分子 / 血液適合性 / 水素結合ネットワーク |
Research Abstract |
本年度は、水溶液あるいは固体状態の高分子近傍の水構造を振動分光法を用いて明らかにした。水溶液状態の場合、正あるいは負電荷を側鎖に有するメタクリル酸およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミド共重合体について、水分子間の水素結合ネットワークに帰属されるO-H伸縮振動帯の解析により、モノマー残基辺りの水素結合の欠損数(N_<corr>)を算出した。その結果、正負電荷数がほぼ拮抗しているときに、N_<corr>値が最小を示し、水の構造にする擾乱効果が非常に小さいことが示された。また、非水溶性のn-ブチルメタクリレートをコモノマーとした固体膜では、正負電荷数が拮抗している場合に、O-H伸縮振動帯の形状が、自由水に類似しており、水溶液系と同様の傾向を示すことが判明した。さらに、この両性高分子薄膜に対する血小板の付着数は、正負電荷の拮抗している場合に、相対的に最も少ないことがわかった。これらの結果は、我々が従来から主張している、「水に対して優しい材料は、体に対しても優しい」という仮説を裏付けるものである。 さらに、各種高分子膜について、真空乾燥と重水との接触を繰り返し、一次水和水の寄与を排除した3000〜3700cm^<-1>のスペクトルをバックグラウンドとして、膜の極近傍の水のO-H伸縮振動を見たところ、ベタイン型の材料では自由水のスペクトルに類似していることが判明した。 また、水の水素結合ネットワーク構造に対する影響小さく、かつ優れた生体適合性が見出されているカルボキシメチルベタインポリマーを表面に集積させた金ナノ粒子について、局在表面プラズモン共鳴法によりタンパク質分子の吸着を見たところ、タンパク質の荷電に関わらす非常に少ないことが見出された。高分子近傍の水構造への擾乱の少なさが、材料表面へのタンパク吸着を抑制し、補体活性化の抑制、血小板吸着の低下につながっていることが確認された。
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Research Products
(6 results)