2006 Fiscal Year Annual Research Report
天然有機物の不均質性を考慮したTRU核種との錯体形成と輸送のモデリング
Project/Area Number |
16206094
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長崎 晋也 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (20240723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 知 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (10114547)
門 信一郎 東京大学, 高温プラズマ研究センター, 准教授 (10300732)
中山 真一 (独)日本原子力研究開発機構, 安全研究センター, 研究主幹・グループリーダ (10370446)
黒澤 進 (独)日本原子力研究開発機構, 地層処分研究開発部門, 研究員
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Keywords | DFT / 銅 / グリシン / ヤンテラー効果 / 水和構造 / フミン酸 |
Research Abstract |
量子化学計算では分子軌道(MO)法と密度汎関数理論(DFT)に基づく手法が用いられる.MO法は精密な計算法であるが,電子数の増加とともに劇的に計算コストが増大する.一方,DFT計算のコストはMO法と比べて少ない.DFT、による電子相関・励起状態の扱いはMO法と比較して簡便であることから,現在,重原子を含む分子の計算では,多くの場合DFTが利用されている.本研究は,フミン酸とTRU核種との相互作用・輸送現象の理解の基礎として,溶媒効果まで含めたDFT計算によりCu(II)-Glycine(Gly)錯体の高速配位子交換現象を明らかにすることを目的とした.Cu(Gly)_2錯体の構造最適化計算の結果から,気相中ではアキシアル位に水が配位した錯体よりも,Glyのみが配位した4配位の錯体の方が安定であることが分かった.一方,溶媒和効果を含めた計算においては,アキシアル位に水を1つ配位した5配位錯体が最も安定であると分かった.これは,5配位となることで構造の非対称性による誘起双極子のため,無極性な4配位錯体よりも溶媒和エネルギーが大きくなり,水溶液中で安定化するためであると考えられる.アキシアル位の水分子の移行による,4-5配位錯体間の交換速度を見積るためのTS構造最適化計算結果をFig.1に示す.Cu(II)と水分子の0原子間の距離を逐次変化させることによりFig.2のようなエネルギーダイアグラムを取得しTS構造を得た.反応の活性化エネルギーはΔG^*=12.8kJ/molと評価された.遷移状態理論によると速度定数は,298Kでk=3.61×10^10 s^-1であった.Cu(II)6水和物の水の交換速度が10^9 s^-1程度である5.Glyが4座配位したため,アキシアル結合はさらに弱くなりCu(II)6配位錯体よりも反応速度が速くなっている本研究の交換速度値は妥当であると考えられる.
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