2005 Fiscal Year Annual Research Report
海洋環境への適応をつかさどる遺伝子の探索:浸透圧調節ホルモン遺伝子
Project/Area Number |
16207004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹井 祥郎 東京大学, 海洋研究所, 教授 (10129249)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兵藤 晋 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (40222244)
井上 広滋 東京大学, 海洋研究所, 助手 (60323630)
宮野 悟 東京大学, 医科学研究所, 教授 (50128104)
坂内 英夫 九州大学, 大学院・システム情報科学研究院, 講師 (20323644)
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Keywords | 環境適応 / 浸透圧調節 / バイオインフォマティクス / 広塩性魚 / アドレノメデュリン / 分子進化 / 比較ゲノム学 / 新規ホルモン |
Research Abstract |
魚類にとって、体液の3倍の浸透圧をもつ海水環境は、常に脱水と塩の過剰の危険性をはらんだ厳しい生息の場である。従って、海水適応にはそれがないと生存できないような必須なホルモンが存在するに違いないが、まだ鍵となるホルモンは見つかっていない。海水適応には過剰なナトリウムやクロライドを捨てるしくみが最も重要であることから、私たちは体内からナトリウムを捨てさせる哺乳類のホルモンのホモログを魚類で探し、その作用を調べるというアプローチで研究を続けている。本年度は、アドレノメデュリン(AM)というホルモンに着目し、そのホモログを魚類のゲノムデータベースで検索した。その結果、5種のAMを発見して、それぞれAM1〜AM5と名付けた。比較ゲノム学的な解析により、AM1が哺乳類で見つかっているAMのオルソログであることがわかった。さらに、魚類のAMファミリーに属するペプチドは、AM1/4、AM2/3、およびAM5の3つのグループに分かれることがわかった。そこで、AM2/3とAM5のオルソログを哺乳類のデータベースで検索したところ、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ、イヌなどでAM2を、ブタ、ウシ、イヌでAM5を発見することができた。チンパンジーやヒトAM5遺伝子には翻訳領域に1塩基の欠失が見られ、別のタンパク質をコードするように変異していたが、その塩基配列は驚くほどよく保存されていた。ラットやマウスのゲノムにはAM5遺伝子らしい配列が存在しないため、AM5遺伝子は霊長類や齧歯類でのみ消失している。AM5はラットで存在しないにもかかわらず、ブタAM5をラットに投与すると強力な降圧作用とナトリウム利尿作用を示した。魚類では、AM1およびAM2遺伝子は浸透圧調節器官に存在するが、環境浸透圧を変化させてもその遺伝子発現に変化が見られなかった。現在、脳に高濃度で存在するAM2の中枢作用を調べている。
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Research Products
(21 results)