Research Abstract |
1.中部沖縄トラフ伊平屋北の海底熱水口(水深約1000m)から「しんかい2000」により採取された試料に対して、希釈培養法による各微生物種の生息量および生理機能解析,分子生物学的手法による微生物群集構造解析を行った.その結果,熱水口を極大としてε-prpteobacteriaによる活発な一次生産の場が広がっていること等を明らかにした.また,ε-prpteobacteriaのほとんどが熱水中の水素ガスを主要なエネルギー源とし多様な代謝系を有する細菌であることをつきとめた.同時にこれらの試料から多数の新規超好熱菌を分離し,新種登録をした. 2.深海熱水口から分離された好気性超好熱古細菌Aeropyrum caminiから酸素耐性が著しく高い超好熱性ヒドロゲナーゼ活性を発見し,精製し性質を調べた.このヒドロゲナーゼ(H_2ase)は分子量97kDaであり,85℃,pH8.5の条件下で最大の水素酸化活性14.8U/mg(ただし,1U=1分間に1μmolの酸化型メチルビオロゲンを還元する活性)を示した.また,この酵素は酸素への曝露168時間後も75%の残存活性を有しており,水素エネルギー触媒に応用可能な特性を示した. 3.超好熱古細菌ゲノムから新規な認識配列をもつLAGLIDADG型ホーミングエンドヌクレアーゼを19種同定し,I-ApeI, I-ApeII, I-PogI, I-Tsp061I等と名づけた.いずれも14〜22bpの長さの偽回文配列または非回文配列を認識するレアカッター酵素であり,それらの基質特異性を詳細に検討した.I-Tsp061Iの結晶については分解能2.7Åの精密立体構造を解明することに成功し,その原子座標をPDBに登録した(PDB番号:1VAW). I-ApeII遺伝子にランダム変異を導入することにより,その基質特異性が野生型とは異なる人工レアカッター酵素の創製に成功した.これらの酵素はゲノム地図作製,メガbp規模のDNA断片のクローニング(メガクローニング)等,ゲノム工学やバイオ産業への応用が期待される.
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