Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西野 麻知子 滋賀県琵琶湖, 環境科学研究センター・琵琶湖研究部門, 統括研究員 (60237716)
金子 有子 滋賀県琵琶湖, 環境科学研究センター・琵琶湖研究部門, 主任研究員 (90280817)
安藤 元一 東京農業大学, 農学部, 助教授 (80339085)
矢部 徹 独立行政法人国立環境研究所, 生物圏環境研究領域, 研究員 (50300851)
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Research Abstract |
2006年度の野外調査としては,沈水群落について国外ではモンゴル北部のフブスグル湖周辺内湖と中部にあるウギヌール湖で,国内では北海道のラムサール登録湿地であるクッチャロ湖で植生調査を行った.動物相については韓国で2カ所,国内8カ所でセンサーカメラを設置しての調査を行った.また琵琶湖と中海において,水鳥の糞に含まれる植物の種子の調査を行った.その結果種類に違いはあるが糞に多数の種子が含まれていることがわかった。 湖沼間の遺伝的分化の有無や湖沼内の遺伝的多様性を明らかにするための遺伝分析手法を,中継湿地に広く分布するマツモを対象として検討した.中国,韓国,国内から採取した試料について3通りの方法によるDNA抽出,核DNAのITS領域と葉緑体DNAのtrnLイントロン,trnL-trnF遺伝子間領域,matKの分析,AFLP分析を試みた.その結果,系統解析を試みた4遺伝子座のうち,trnL-trnF遺伝子間領域とITS領域について塩基配列を決定することができた.ITS領域のハプロタイプには中国から日本東北地方まで広範囲に分布するものと局所的に分化したものがあった.AFLP解析では合成プライマーで良好な結果が得られ,湖沼間の遺伝分化の解析等が可能となった. 底生動物については2004年度に行った韓国,北海道の標本の選別,同定を行った.その結果,韓国のNeocaridinaは,日本の在来亜種であるNeocaridina denticulata denticulataと形態的には同種と判断されることが明らかになった.分類の遅れているミズダニ類などの標本はそれぞれの専門家に依頼し,属までの同定を行った. 水鳥が感染症を伝播している可能性の検討や外来種侵入による湿地生態系の撹乱程度を明らかにするという目的で渡り鳥の中継地での地上動物相を調べている.これまでの調査の結果,モンゴルではナキウサギなど小型種の多いというが特徴がみられた.また韓国と日本の動物相は類似しており,いずれでもタヌキが最も多かった.外来種としては,韓国ではアライグマとヌートリアが,日本ではアライグマおよび飼養品種のキツネが記録された.モンゴルではウシ,ウマなどの家畜による生態系への影響が大きかった. 東京湾湾奥の谷津干潟は,埋め立てにより周囲をコンクリートに囲まれた閉鎖性の強い人工的な潟湖干潟である.ここでのアオサの発生面積は指数的に増加しており,2002年には干潟面積の約70%を占めた.それは干潟滞留水の海水化が進行した結果と,考察された.さらにアオサの発生時期が年々早まり,逆に消失時期は遅くなる傾向を確認した.谷津干潟周辺の秋期から初春にかけての気温の上昇傾向とアオサの発生および消失時期との関連性が示唆された. 「大きな湖におけるラムサール条約の活用」(7月17日),「中国雲南省Erhai湖における水生植物群落の変遷」(10月31日),「カムチャッカにおけるガン類の調査の歩み」(11月28日)と題した公開の研究会を開催した.
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