2005 Fiscal Year Annual Research Report
野生チンパンジーにおける新奇行動の展開と文化的行動の発達過程
Project/Area Number |
16255007
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Research Institution | Japan Monkey Centre |
Principal Investigator |
西田 利貞 (財)日本モンキーセンター, 所長 (40011647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 晶子 沖縄大学, 人文学部, 助教授 (80369206)
保坂 和彦 鎌倉女子大学, 児童学部, 専任講師 (10360215)
中村 美知夫 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30322647)
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Keywords | チンパンジー / 文化 / 新奇行動 / 毛づくろい行動 / 発達 / 学習 / 父性解析 / 腸内細菌 |
Research Abstract |
マハレM集団の文化的行動が、離乳期を過ぎたすべての構成員に見られるかどうか検討した。毛づくろいのパターンやオオアリ釣りはほぼすべての個体に見られることを確認できたが、求愛誇示では、リーフ・クリップを観察されていない雌がいる、シュラップ・ベンドはほぼ雄に限られる、威嚇誇示では金属壁を利用するドラミングはオトナ雄に限られるなど、ばらつきのある行動もある。過年度、発見された新奇行動のうち、腹たたき(威嚇ディスプレー)と口による赤ん坊運びが他の個体に伝播しているという証拠は見つからなかった。M集団の新入り雌が、直ちにリーフ・クリッピングや、対角毛づくろいを示したことから、これらの行動はM集団に限らず、マハレ地域個体群に広く共有されている文化的行動であることが示された。M集団と隣接のY集団は、異なる種類の食物を利用していた。アカコロブスのオトナ雄が攻撃的になったことが、チンパンジーの獲物選択、狩猟戦略に微妙な影響を及ぼしている可能性がある。獲物の対捕食者行動の変化に対応しようとする若いチンパンジーがおり、それが他個体の行動にも伝播するのかどうか、狩猟のパターンの世代間変化を明らかにしていく必要がある。行動が父親から息子へ伝播している可能性を調べるため、糞・尿・食物ワッジ等の遺伝試料からDNAを抽出し、マイクロサテライト遺伝子の解析方法を整えた。ビデオ資料からシラミ卵寄生率を分析した結果、シラミ卵はチンパンジーの毛1000本あたり、約2個寄生していて、ニホンザルのシラミ寄生率に比べて高かった。現在、アカンボウ期からコドモ期にかけての外部寄生虫除去行動のやり方と効率を分析中である。糞サンプルを用いて、腸内常在細菌であり、有害作用のあるウェルシュ菌の保有状況について調べた。飼育下のチンパンジーや他の野生集団と比べ、マハレのサンプルではウェルシュ菌の検出率が有意に低かった。糞サンプルからホルモンを抽出し、内分泌動態について現在解析中である。収集資料は、ビデオ映像100時間、静止画像500枚以上など。
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Research Products
(15 results)