2006 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ熱帯林における人類と類人猿の共存と社会進化
Project/Area Number |
16255008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山極 壽一 京都大学, 大学院理学研究科, 教授 (60166600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 光雄 京都大学, 大学院アジアアフリカ地域研究研究科, 教授 (50115789)
鈴木 滋 龍谷大学, 国際文化学部, 助教授 (80324606)
湯本 貴和 京都大学, 総合地球環境学研究所, 教授 (70192804)
澤田 昌人 京都精華大学, 人文学部, 教授 (30211949)
竹ノ下 祐二 財団法人日本モンキーセンター, リサーチフェロー (40390778)
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Keywords | ゴリラ / チンパンジー / 熱帯林 / 同所的共存 / 遊動 / 競合 / 果実食 / 狩猟採集民 |
Research Abstract |
本研究は、熱帯林で進化したと考えられる人類と類人猿の生態、社会の特徴が環境の変化にどう対応しているかを分析し、それが他種と同所的に共存することによってどのような影響を受けているかを解明することを目的としている。本年度はガボン共和国のムカラバ国立公園に代表者、分担者、協力者を派遣して、ゴリラとチンパンジーの遊動と食物選択について調査を行った。1集団のゴリラの人付けがかなり進んだため、ほぼ毎日この集団の通跡を記録し、新しい糞を収集することができた。同時に、毎月2回、5本のトランセクトをモニターしてゴリラとチンパンジーの採食する果実のなり具合を記録している。その結果、ゴリラの集団は果実の変動によってまとまり方を変えることはないが、果実の利用可能性によって遊動距離や遊動パターンを大きく変化させることがわかってきた。しかも、葉食傾向の強いマウンテンゴリラと異なり、数種類の果樹は頻繁に繰り返し利用する。これは、果実食のチンパンジーと類似しているが、ゴリラはチンパンジーのように離合集散することはなく、訪問時間が短い。また、主要な果実はゴリラとチンパンジーで食べる時期を分けている。このように、食環境の変動によって、ゴリラが種内や種間の競合を変化させ、それに応じた行動をとっていることが明らかになった。もう一つの調査地コンゴ民主共和国のカフジ国立公園では、政治情勢が不穏なため現地協力者がこれまでの調査を継続しているが、ムカラバほど食環境は変動せず、類人猿の密度も低い。このため、ゴリラもチンパンジーも種内の集団内、集団間の社会交渉によって遊動パターンを大きく変化させていることがわかってきた。両種類人猿の社会関係に影響する生態要因や社会要因が明らかになってきたので、現在これらの成果をまとめて発表する準備を進めている。両地域では狩猟採集民の遊動に関する資料も蓄積しており、それを類人猿の特徴と比較するために生物経済学的分析を行っている。
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Research Products
(6 results)