Research Abstract |
平成18年度にはロシア,サハリンにおいて堆積物試料を採取し,堆積物の花粉分析,年代測定を進めた。 平成18年年8月28日から平成18年9月15日に新潟→ハバロフスク→ユジノサハリンスク→サハリン中北部→バニノ→ハバロフスク→新潟のコースで海外出張を行い,サハリン中北部地域において,堆積物の採取,植生調査,土壌調査等を行った。 採取した堆積物 Tumanovo露頭:0-340cm, Khoy露頭:0-308cm, Longari Bog:0-170cm 最終氷期以降の極東地域における植生変遷 これまで採取した西シベリア,アムール川河口域,カムチャツカ半島および上記のサハリンで採取した堆積物の花粉分析,微小炭化片分析,年代測定,地磁気測定などを進め,日本列島を含めた極東地域の植生変遷を明らかにした。 最終氷期最盛期には,カムチャツカ半島では,イネ科,ツツジ科,カバノキ科などからなる低木ツンドラが認められる。アムール川流域では,カバノキ属,ハンノキ属,イネ科,ヨモギ属が優占し,北部ではグイマツ,南部ではトウヒ属が伴っていた。おそらく疎林状の植生にカバノキ属やハンノキ属からなる低木植生が広がっていた。完新世初期には,サハリンではエゾマツとカバノキ属が優勢となり,常緑タイガが再び形成された。北海道では8,000年前から針葉樹は減少し,コナラ亜属(ミズナラ)などの落葉広葉樹が優勢となり,トドマツがこれに伴う針広混交林が形成された。この落葉広葉樹の増加は,アムール川流域でも,ほぼ同じ時期に起こった。カムチャツカ半島やマガダン周辺の沿岸域では,完新世を通じてカバノキ属,ハンノキ属にハイマツの伴う落葉樹林が発達した。さらに特徴的なことは,アムール川流域,サハリン北部で完新世後半にトウヒ属の占める割合が増加していることである。また,カムチャツカ半島の内陸部では,完新世晩期にトウヒ属,グイマツが増加する。
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