Research Abstract |
情報立国を目指す我が国のe-Japan戦略において,21世紀の情報化社会の情報基盤であると位置付けられる地理情報システムは,先端的な情報通信技術を利用した多目的なシステムであり,現在では行政・企業・社会一般の各分野において巨大な需要が創出されている.これは,広い範囲にわたる基礎的な学問分野に支えられる技術である.地理情報システムのためのデータベース設計の基本となるデータ構造,算法の検討には,位相幾何学,グラフ理論,組み合わせ論,計算機科学といった情報システム理論が基本となる.また,応用では,都市計画,オペレーションズ・リサーチの分野の研究において基本的なモデル構築とデータ生成を行なう重要なツールとなる. このような分野の研究成果の有用性を検証するためには,実際的な規模の地理情報データが不可欠である.しかし,それらはデータ量が膨大で,それぞれ独特の形式で内容が記述されているうえに,現状の地理データは整合性に欠ける部分があることや,必要な情報を取り出すことが難しいという問題点が指摘されている.従って,利用できる形に翻訳するための初期的な労力が多大であることが,少なからず利用の制限となっている.本研究では,これまでに蓄積してきた空間データに加えて,その上に展開される社会データ・経済データ・統計データを整備し,空間データと共に,利用者にとって利用しやすいシステムを構築することを目的としている. 本年は,国土地理院の数値地図2500(空間データ基盤)をはじめとする各種のデータの特徴とその性質の検証と,それから研究用に必要な道路の位相構造などを取り出す手法などのツールの構築を行なってきた.それと同時に,既存の地図における整合性に関する問題点の列挙とその整理を行なった.また,市販の数値地図の更新に対応するための方法についても着手している.それと並行して,実際の応用の場面において利用した場合に,どのような点が不足しているかなどを洗い出すために,そのような観点から数値地図データを利用しながら,必要とされるデータ形式や要素に関する研究を行ってきた.
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