Research Abstract |
本研究では,各種の統計,財務情報など,公表されている最新の産業レベルのデータ用いて,1980〜2005年の約25年間にわたってICTの経済効果を詳細に分析した。その結果,わが国では1990年代の後半以降,電気機械や輸送機械などの加工組立産業において,ICTが付加価値生産性に貢献していることを計量分析の結果として実証した。しかし,同じ製造業であっても繊維や食料品などの消費関連や非製造業では,1995〜2002年の問もICTが付加価値生産性に貢献していることを明確に実証することができなかった。つまり,わが国において2002年の時点では産業間で工CTの経済効果は異なるものとなっており,ICTが全ての産業で付加価値生産性を高める状況にはなっていないとの結論を得た。上記の結論を踏まえ本研究では次の段階として,何故ICTの経済効果を全ての産業で肯定することができないのかその要因について考究してきた。ICTの経済効果を分析するには,ICTが経済効果を発現するまでのプロセスを解明することが必要である。そのためには,具体的な個別企業の分析が欠かせない。しかし,わが国では収集可能なデータの制約からICTの経済効果に関する個別企業の分析は極めて困難である。この点に関して本研究では,内閣府経済社会総合研究所および経済産業省の協力により,2003年「情報処理実態調査」において実施,集計された追加的なICTに関する調査のデータベースを用いて企業レベルの研究を一部実施することができた。一方,本研究で,ICTの導入から経済効果を発現するまでのプロセスを解明するには,ICTを導入する側(ディマンドサイド)の分析がだけではなく,供給する側(サプライサイド)からの分析不可欠と判断した。本研究では,わが国の情報サービス業をICTのサプライサイドと想定し,同産業の構造について多様な手法を用いて詳細に分析した。さらにその結果を踏まえてICT経済効果の発現プロセスについて解明を試みた。
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