2005 Fiscal Year Annual Research Report
単一ニューロンの高度な情報処理に基づく神経回路機能の生成
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16300096
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Research Institution | RIKEN |
Principal Investigator |
深井 朋樹 独立行政法人理化学研究所, 脳回路機能理論研究チーム, チームリーダー (40218871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺前 順之介 独立行政法人理化学研究所, 脳回路機能理論研究チーム, 研究員 (50384722)
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Keywords | 脳・神経 / 認知科学 / 生物・生体情報 / 計算機シミュレーション / ソフト・コンピューティング |
Research Abstract |
大脳皮質の神経細胞には、双安定状態や多重安定状態を実現する、さまざまな生理学的メカニズムが用意されていることが、過去の実験的、理論的な研究報告から示唆されている。例えばその中には閾値下の膜電位のUP、DOWNの2状態の存在、嗅内野ニューロンに見られる多重安定な持続発火などが存在する。昨年度はCaストアからの放出機構を用いた多重安定なニューロンモデルを構築したが、本年度は大脳皮質ニューロンの双安定状態と意思決定との関わりについて、入力情報の時間積分プロセスに焦点を当て、神経回路モデルの構築と生理実験データによる検証を行った。具体的にはサルの帯状皮質野の遅延期問活動の解析において、帯状皮質の神経活動レベルに二つの状態が存在することを、様々な統計解析の手法を駆使して明確に証明した。そのためには非定常な発火から、急激に発火率が変化するプロセスを検出する必要があるが、限られたデータセットであったにもかかわらず、「consecutive firing rate distribution」という新しい分析手段を導入し、その統計検定を行うことで、信頼性の高い証拠を得ることができた。また、単純な確率過程モデルを導入して解析的な計算を行うことによって、提案した入力の時間積分機構が働くための、理論上の制約条件を明らかにした。時間積分のための双安定ニューロンの神経回路モデルは過去にも提案されている。我々の提案が画期的な点は、一様なシナプス結合強度を持つ双安定なスパイク・ニューロンの相互結合ネットワークに、確率過程ダイナミクスを導入することによって、積分メカニズムを実現する点である。これは従来までのシナプス結合の微調節に頼る積分回路とは、全く異なる原理で機能するモデルである。この神経回路モデルは、生理実験のデータ解析の結果と併せて、神経科学の国際誌に投稿中である。また入力の時間積分メカニズムに関するレビューを欧文誌に執筆した。
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Research Products
(4 results)