2005 Fiscal Year Annual Research Report
嗅上皮から嗅球さらには嗅皮質へと至る機能的嗅覚神経回路形成の分子機構の解明
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16300105
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Research Institution | RIKEN |
Principal Investigator |
吉原 良浩 独立行政法人理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, チームリーダー (20220717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮坂 信彦 独立行政法人理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, 研究員 (70332335)
吉原 誠一 独立行政法人理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, 研究員 (90360669)
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Keywords | 嗅覚系 / 神経回路形成 / ゼブラフィッシュ / olfactory marker protein / TRPC2 / 匂い分子受容体 / フェロモン受容体 / 蛍光蛋白質 |
Research Abstract |
ゼブラフィッシュは、その生物学的特性や遺伝学的実験への応用性などから発生生物学研究において非常に有用なモデル脊椎動物である。また嗅覚系に関してマウスなどの哺乳類と比べると、匂い分子受容体遺伝子数及び嗅球上の糸球数が1/10程度と少なく、神経回路も比較的単純であるという利点を持つ。魚類には哺乳類でみられるような鋤鼻器は存在せず、単一嗅上皮の表層に微絨毛嗅細胞が位置し、深層には繊毛嗅細胞が分布している。しかし、魚類においてこれら二種類の嗅細胞が嗅球へどのような軸索投射をしているかはまだ充分に明らかにされていない。 本年度はまず、繊毛嗅細胞と微絨毛嗅細胞に特異的に発現する分子を探索し、繊毛嗅細胞にはOMP、CNGA2チャネル、ORタイプ匂い分子受容体が、一方微絨毛嗅細胞にはTRPC2チャネルとV2Rタイプ匂い分子受容体が各々特異的に発現していることを見出した。次にOMPとTRPC2の各遺伝子発現プロモーターの支配下に蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュ系統を作製することにより、繊毛嗅細胞と微絨毛嗅細胞を可視化することに成功した。各トランスジェニック系統において嗅細胞の軸索投射を観察したところ、繊毛嗅細胞の軸索は主に嗅球内の背側と内側に位置する糸球へ投射するのに対し、微絨毛嗅細胞の軸索は主に外側に位置する糸球へと投射することが明らかになり、これらが嗅球上で重なることはなかった。またこのような二種類の嗅細胞の異なる軸索投射様式は、受精後2日目の稚魚から観察された。以上の結果は、魚類の嗅覚系において繊毛嗅細胞と微絨毛嗅細胞が機能的に異なる匂い情報を受容し、それら二種類の情報は異なる神経回路を通って伝達していくことを示唆するものである。また特定の嗅細胞が可視化されたトランスジェニックゼブラフィッシュ系統は、今後の嗅覚研究に有用なツールとなるであろう。
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Research Products
(7 results)
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[Book] 香りの百科事典2005
Author(s)
谷田貝光克, 吉原良浩 他編
Total Pages
945
Publisher
丸善
Description
「研究成果報告書概要(和文)」より