Research Abstract |
前年度までに検証した,紫外線硬化樹脂による点字の触読性を向上させる指サックに関して,素材の効果の定量化を検討した.具体的には,指サックの素材としてより効果的な特性の定量化として布の硬さに着目し,触読時と同様の条件で布を点字印刷物に押し当てた際に布の表面形状をレーザー変位計で計測し,元の点字の形状との差を指標化することによって,形状再現性の定量化を試みた.触読実験の結果,提案した指標すなわち硬さに着目した形状再現性が布の薄さよりも触読性に支配的に影響することが確認できた. また点字のみならず触図に関する研究として,触図に用いるパターンを定める際のガイドラインをめざして,次の2種類の実験研究を行った.一つは基本的な記号である円,正三角形,正方形(●,▲,■)のサイズの検討であり,もう一つは領域を表すために用いられる面パターンのドット密度の検討である.これらの課題は,実際に触図を利用する現場からのニーズを踏まえて設定した.前者については,各形状がそれと識別できる最小サイズを実験により明らかにした.それぞれの形状について,大きさの異なる記号を製作し,触知実験を行った.実験の結果,記号形状ごとの最小サイズが明らかになり,特に三角形がより小さなサイズでも識別できることも明らかになった.後者については,点間隔の異なるドットパターンを製作し,系列カテゴリー法により触知した際に判断する粗密感を明らかにした.これらの結果は,研究代表者が取り纏めを行っている触知案内図の標準を検討する際にも有用なデータとなり得る. また上記の研究成果を含めて,触知図に関する国際会議に於いて日本に於ける触知図の標準化の状況を発表し,欧州や米国の専門家らと意見交換を行った.
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