Research Abstract |
熱ストレスを含む外界からの様々なストレスに対して,熱ショックタンパク質が誘導される.熱ショックタンパク質(HSP70)は分子シャペロンとして機能し,タンパク質の保護や新生を援助している.そこで,温熱負荷により誘導されたHSP70の発現によって,二週間の尾部懸垂ラットの廃用性筋萎縮を予防することが可能か否かの検討を行った.本年度の研究においては,1)温熱負荷により骨格筋にHSP70の誘導が観察されるか,2)温熱負荷後,二週間の尾部懸垂を行い,HSP70含有量の変化,及び筋萎縮の予防効果があるかを検討した.ラットを42℃の環境に一時間暴露すると,一時間後には体温,筋温ともに42℃に至った.そこで,ヒラメ筋を摘出し,HSP70の発現をWestern blotting法で測定すると有意に上昇を示していた.次に温熱刺激後に二週間の後肢懸垂(HS+TT)を行うとHSP70は対照群より有意に高値を示した.一方,温熱負荷なしに二週間の後肢懸垂(HS)を行うとHSP70は有意に減少した.筋原線維タンパク質含有量を測定すると,HSでは正常筋に比較すると有意に減少を示した.しかし,HS+TTでは正常筋と差がなく,単位重量当たりの筋萎縮を抑制したものと考えられる.筋組織当たりの筋原線維タンパク質は正常筋で15±2mgであったが,HS;4±1mg, HS+TT;7±1mgであった.ミオシン重鎖アイソフォーム(MHC)における遅筋型MHC I/βの占める割合は正常筋で89%,HS;82%,HS+TT;85%となった,また,HS+TTにおける速筋型MHC IId/の出現率も低下した.本研究で得られた結果から二週間の尾部懸垂において,温熱負荷により萎縮予防効果が観察され,プレコンディショニング温熱負荷の有効性を示すことができた.今後,さらに検討を重ねていきたいと考えている.
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