2005 Fiscal Year Annual Research Report
心理的変動が運動スキルに及ぼす影響に関す脳神経科学的研究
Project/Area Number |
16300206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大築 立志 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30093553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 和俊 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (30302813)
村越 隆之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60190906)
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Keywords | 心理的ストレス / Go-NoGo課題 / 課題要求度 / VAS / fMRI / ACC / cocontraction / motivation |
Research Abstract |
本年度は、被験者の心理的状態を変動させる課題達成に関する要求度の違いが、判断の正確さ及び反応の素早さに与える影響を、Go-NoGo課題(NoGo刺激には反応せず、かつGo刺激には定められた制限時間以内に反応する)を用いて検討した。 実験1では、許容範囲内の失敗数で規定試行数を達成できるまで何度もやり直しがありうるstress条件では、失敗を気にせずに規定試行数をこなせばよいcontrol条件にくらべて、STAI、心拍数、失敗率の増加が見られ、第二指屈曲の拮抗筋である総指伸筋及びストレス状況下でtonicに活動するとされている僧帽筋に筋電図増強が見られた。また、失敗直後にVASスコアが増加し、失敗が一時的な不安を引き起こすことが示唆された。 実験2では、被験者に反応時間・失敗数に応じた得点を随時feedbackし、かつ設定された目標得点を越えた者には賞金を与えてmotivationを高めた上で、得点・失点が通常の3倍の配当となるtriple条件と通常条件を比較した。その結果、課題要求度がより高いtriple条件で、実験1より多くの筋の活動増加、co-contractionの促進、心拍数・MSRの増加が見られたが、不安レベル及びパフォーマンスは変化せず、motivationによる補償が示唆された。 実験3では実験2の課題を用い、fMRIによって課題要求度の高い状況での脳活動を検討した。triple条件で、反応時間は変わらないが失敗率が増加した被験者2名において、刺激認知に関わる視覚関連領域および失敗による不安レベルの上昇に関与する前帯状皮質(ACC)の活動増加が見られた。また、失敗率を増加させずに反応時間の短縮に成功した被験者においてはこれらの他に、間違った反応を抑制する機能を持つとされる前頭皮質の活動が認められた。 以上のことから、視覚判断課題においては、心理的ストレスは刺激の認知過程及び運動のプログラミング過程に影響を及ぼし、課題要求度の高い状況下におけるよいパフォーマンスの発揮に関して、視覚関連領域及び前頭皮質の活動が重要であることが示唆された。
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